コソボとセルビア、領土交換案浮上 正常化交渉へ打開、EU内では懸念

 

 【ベルリン=宮下日出男】民族対立が続くバルカン半島のセルビアとコソボの間で、互いに関係が深い少数派民族が集まる地域を譲る「領土交換」案が浮上してきた。両国は欧州連合(EU)加盟を目指し、関係正常化の交渉を行っているが、交渉は難航中。領土交換でその打開を図る狙いだが、EU内ではむしろ周辺地域の不安定化を招くと懸念が強まっている。

 コソボがセルビアから一方的に独立後、両国は対立が続く一方、ともにEU加盟が悲願。EUはその前段として関係正常化を求め、交渉を仲介しているが、互いに抱えるアルバニア系、セルビア系の少数派民族の取り扱いが交渉難航の原因の一つとなっている。

 領土交換はこの打開のため浮上した。コソボ北部のミトロビツァなどセルビア人が多数派を占める地域をセルビアに、セルビア南部のプレセボなどアルバニア系住民の多い地域をコソボにそれぞれ譲る案が取り沙汰されている。

 両国首脳は具体的内容に言及していないが、セルビアのブチッチ大統領は「どこに属しているかわからないような領土は常に紛争の源になる」として前向き姿勢。コソボのサチ大統領も「国境の修正」に一定の理解を示している。

 バルカン半島ではマケドニアが最近、EU加盟の障害だったギリシャと国名論争に決着をつけ、その実現に期待が高まっている。セルビアとコソボの加盟の展望も広がれば、地域の安定に寄与する。米国も「領土の調整は排除しない」(ボルトン大統領補佐官)と理解を示した。

 ただ、この地域では1990年代、セルビアなどで構成した旧ユーゴスラビアが民族紛争を経て解体し、各国が独立したが、民族はなお入り乱れている。国境見直しの前例をつくれば、民族対立を抱えるボスニア・ヘルツェゴビナなどに影響を与える可能性があり、EUでは「古い傷を開く」(マース独外相)などと否定的な声が目立っている。

 ■コソボ 14世紀ごろセルビア人の王国の中心地として栄えたが、17世紀以降、イスラム教に改宗したアルバニア人が入植。第二次大戦中はアルバニアに併合され、戦後はユーゴスラビア連邦セルビア共和国の自治州となった。98年にはアルバニア系の住民組織とセルビア治安部隊の本格戦闘に発展。北大西洋条約機構(NATO)の空爆での介入などを経て国連暫定統治下に置かれ、2008年に独立を宣言した。セルビアはなお国家承認を拒否している。