米韓の不協和音に付け入る北朝鮮 「終戦宣言」前のめりの文在寅政権取り込みへ

激動・朝鮮半島
5日、北朝鮮・平壌訪問を終え、ソウル空港に到着した鄭義溶・大統領府国家安保室長(中央手前)らの特使団(聯合=共同)

 【ソウル=桜井紀雄】韓国の文在寅大統領が5日に北朝鮮に派遣した特使団は3月に金正恩朝鮮労働党委員長から「非核化」の言質を取り付け、その後の南北・米朝首脳会談への道筋を付けた面々だ。その非核化の約束に疑問符が付きつつある。北朝鮮は米韓の不協和音に付け入るかのような動きも見せている。

 「朝米間の信頼醸成では平和体制構築のための政治的意志の表れとして終戦を宣言することが最初の工程だ」。北朝鮮外務省軍縮・平和研究所所長名でこう米側に朝鮮戦争の終戦宣言を要求する論文が同省サイトに4日付で掲載された。

 終戦宣言を軸に北朝鮮の非核化を促そうという構想はそもそも文氏が描き、金氏とトランプ米大統領に提案したとされる。

 だが、米側は宣言には北朝鮮の具体的非核化措置が必須だとの立場だ。これに対して北朝鮮は既に核・ミサイル実験中止や核実験場廃棄といった措置を取っており、米側が宣言に応じない限り、「われわれが一方的に動くことは絶対にない」(李容浩(リ・ヨンホ)外相)と反発。皮肉にも終戦宣言が米朝協議の膠着(こうちゃく)化を招いた。

 南北が合意した協力事業をめぐって米韓の温度差も露呈した。文氏が8月中を目指していた北朝鮮・開城(ケソン)の南北共同連絡事務所の開設は大きくずれ込んでいる。制裁に違反する恐れがあるとの米側の懸念が一因とされる。南北の鉄道連結のため、先月下旬に計画した列車の試験運行も米軍主体の国連軍司令部が不許可とした。非核化が滞る中での事業の推進に絡み、米国務省は「南北関係の進展は非核化と歩調を合わせるべきだ」とクギを刺した。

 北朝鮮はメディアを通じて「米国は事あるごとに『時期尚早』だと足を引っ張り、韓米間の不協和音が高まっていると愚痴をこぼしている」と露骨に不満を示し、文政権に「誰かの顔色をうかがわずに、わが民族同士で解決すべきだ」と迫った。文政権が終戦宣言を軸に非核化停滞の打開を図ろうとしても北朝鮮ペースに陥りかねず、今後も米韓の溝が浮き彫りになる可能性は否定できない。