パレスチナ議長「攻撃だ」 トランプ政権の資金拠出中止を非難…抗議活動拡大の恐れ

 

 【カイロ=佐藤貴生】トランプ米政権が国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)への資金拠出の中止を表明したことで、米国に対するパレスチナ側の反発がさらに高まることは確実だ。米側は“兵糧攻め”で和平協議のテーブルに着くよう圧力をかけた形だが、エルサレムをイスラエルの首都だと認定し、5月にエルサレムに大使館を移転した米政権への不満はパレスチナ人の間に根を張っており、抗議行動はさらに拡大する恐れが強い。

 パレスチナ自治政府のアッバス議長は、米の決定を「攻撃」だと非難。UNRWAのマシャシャ報道官は産経新聞に、「米の決定に失望した。今後もパレスチナ難民の支援を続ける」と電子メールで回答した。ドイツが拠出資金を積み増す方針を示すなど、国際的に波紋が広がっている。

 パレスチナ和平協議では「エルサレムの地位」に加えて「帰還権」が主要なテーマとなってきた。1948年のイスラエル建国に伴い発生した第1次中東戦争を機に、故郷を追われたパレスチナ人は70万人以上いたとされるが、現在UNRWAに登録している難民は子や孫の世代を含め約530万人に上る。

 パレスチナ人とユダヤ人との人口比に影響を及ぼすことなどから、イスラエルは難民の帰還権を一貫して否定。米側も難民認定者の数を減らすよう求めているが、パレスチナ問題の根幹に関わるだけにパレスチナ側にとって譲歩できるものではない。

 イスラエル国会では7月、イスラエルを実質的にユダヤ人国家であると規定する「ユダヤ国民国家法」が可決された。帰還権の拒否を重ねてアピールした形ともいえ、2014年に中断した和平交渉の再開は当面、望めないのが実情だ。

 こうした中で、パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム原理主義組織ハマスの報道官は、「米国の指導層は私たちの敵となった。不正な決定には決して屈しない」と述べた。

 難民はガザやヨルダン川西岸のほか、ヨルダンやシリア、レバノンにおり、低劣な生活環境の下、将来に希望が持てない若者が多数いる。ガザでは3月以降、イスラエル領内への帰還を求める抗議デモが続き、同国軍との衝突で少なくとも170人が死亡した。若者たちの怒りに火がつけば、抗議行動がガザを越えて拡大する恐れもありそうだ。