韓国国防白書から「北は敵」の表現消える? 対話受け文在寅政権が検討 「時期尚早」との批判も

激動・朝鮮半島
南北離散家族の再会で、親族を見つけて手を振る北朝鮮の国民=22日、北朝鮮の金剛山(ロイター)

 【ソウル=桜井紀雄】韓国政府が12月に発刊予定の2018年版国防白書から北朝鮮を「敵」と位置付ける表現を削除する方向で検討していることが分かった。韓国メディアが22日、韓国政府高官らの話として一斉に報じた。4月の南北首脳会談で発表し、敵対行為の中止をうたった「板門店(パンムンジョム)宣言」を受けた動きだが、北朝鮮の具体的非核化措置が進展しない中、野党からは「時期尚早だ」との批判も上がっている。

 国防白書は隔年で刊行され、保守系の李明博(イ・ミョンバク)政権下で北朝鮮による韓国哨戒艦撃沈や延坪島(ヨンビョンド)砲撃事件が起きた10年に発刊の白書から「北朝鮮政権と北朝鮮軍はわれわれの敵」と記述。後継の朴槿恵(パク・クネ)政権下でも同様の表現が用いられた。

 今回の見直しについて、韓国政府関係者は「政府の公式冊子に北朝鮮軍を敵と規定したまま、北側と宣言に明示された敵対行為の解消措置を協議するのは矛盾がある」と指摘。「敵」を「軍事的脅威」などの文言に改める方向で検討されているという。

 16年版では、北朝鮮の核やミサイルなど大量破壊兵器、サイバー攻撃、テロといった脅威が続く限り、「敵」だと規定しており、北朝鮮が核実験やミサイル発射を中止していることで、脅威のレベルが低下したとの認識も見直しの背景にあるとされる。

 国防白書で北朝鮮を位置付ける表現は、情勢と政権の立場を反映して変遷してきた。1994年の南北協議で「ソウルが火の海になる」と北朝鮮が威嚇した発言を受け、金泳三(キム・ヨンサム)政権下の95年版から「主敵」という記述が登場した。だが、2000年に初の南北首脳会談を行うなど対北融和策を進めた金大中(キム・デジュン)政権以降、この文言が議論を呼び、盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権や李政権初期の04~08年版では「軍事脅威」や「深刻な脅威」に変更された。

 文在寅(ムン・ジェイン)大統領は昨年の大統領選の討論会で、北朝鮮を「主敵」とみなすかを問われ、明言を避けた経緯がある。今回の動きについて米朝協議が停滞し、北朝鮮の核・ミサイルの脅威が依然、存在する中、「北への誤ったメッセージになる」と憂慮する声もある。