ASEAN、南シナ海問題でさらに対中軟化か 2日に外相会議

 
中国外務省で記者会見する耿爽副報道局長(共同)

 【シンガポール=吉村英輝】東南アジア諸国連合(ASEAN)の外相会議が8月2日、シンガポールで開催され、一連の関連外相会議が開幕する。加盟国内では、「親中派」とされるカンボジアでフン・セン政権が総選挙で圧勝し独裁色を強め、経済力を武器にした中国の影響力が強まる。その他の一部加盟国は、領有権で対立する南シナ海問題で、態度の軟化を迫られそうだ。

 「フン・セン首相の指導下で人民党が勝利したことを心から祝福する」。カンボジア総選挙翌日の7月30日、中国外務省の耿爽(こう・そう)報道官は、与党・カンボジア人民党の圧勝を歓迎し、独裁強化を非難する欧米と対照的な対応を見せた。

 フィリピンは2012年、スカボロー礁(中国名・黄岩島)をめぐる中国との紛争の明記を外相会議の共同声明に盛り込むよう求めたが、議長国のカンボジアが認めず、声明の採択が見送られた。以来、中国はカンボジアを“代弁者”に、「全会一致」を原則とするASEANを揺さぶる。

 オランダ・ハーグの仲裁裁判所は16年7月、南シナ海における中国の主張を全面否定する裁定を出した。だが、提訴国であるフィリピンで就任したばかりのドゥテルテ大統領は、中国からの経済支援と引き換えに裁定の「棚上げ」に応じた。

 フィリピン下院では最近、ドゥテルテ氏に外交政策を助言してきたアロヨ元大統領が、議長の要職についた。11年に選挙法違反容疑、12年に横領容疑で逮捕されたが、ドゥテルテ氏が16年に大統領に就任した直後、拘束先の軍病院から約4年ぶりに釈放された。

 アロヨ氏の周辺には、中国企業からの収賄疑惑がつきまとう。アロヨ氏は「親中派」とされ、復権後は公式訪中するなどしてドゥテルテ氏の中国融和路線を後押しする。

 今年の議長国シンガポールは、小国として「法の支配」を重視する立場。南シナ海問題では、フィリピンが議長国だった17年11月の首脳会議で議長声明から外されていた「懸念」の文言を今年4月の首脳会議で復活させた。

 ただ、今回の外相会議で、ASEANの対中窓口はシンガポールからフィリピンに引き継がれる。南シナ海の紛争防止を目的とするASEANと中国の「行動規範」(COC)の策定でも、フィリピンは法的拘束力付加などの交渉の前面に立つが、デ・ラサール大学(フィリピン)のリチャード・ヘイダリアン助教は「中国はCOC交渉の陰で軍事拠点化を進めている」と指摘。「対話」を重んじるドゥテルテ氏の対中姿勢は「中国の期待通りだ」と見ている。