東シナ海の中国軍事演習、狙いは台湾よりも日米だった?

中国軍事情勢
4月12日、中国国営新華社通信が配信した、南シナ海で空母「遼寧」を中心に航行する中国海軍の艦隊の写真(AP)

 中国の人民解放軍は7月18~23日、浙江省沖の東シナ海で軍事演習を行う予定だった。実際には台風の影響で一部が延期されたとみられるものの、中国メディアは「台湾独立派に向けたものだ」と強硬な警告を発した。これに対し、台湾側からは、「演習は台湾ではなく日米同盟に向けられたものだ」との情報が流されるなど、虚々実々の駆け引きが行われた。

中国紙が威嚇

 17日付の中国共産党機関紙、人民日報系の環球時報(電子版)は、浙江海事局が16日、浙江省沖の東シナ海に18日午前8時から23日午後6時までの間、航行禁止区域を設定したと報じた。発表文は「実際に武器を使用する訓練」としており、実弾演習が予想された。

 演習海域は台湾本島から北側約300キロの広範囲で、同紙は「匿名の専門家」の言葉として、「演習海域を平行移動させると、基本的に台湾全体を覆う」と指摘。「台湾独立派の(国家)分裂主義者のためにしつらえた実弾演習だ」と強調した。記事の表題には「予告していないと言うなかれ」という布告の最後に用いる定型文が使われた。台湾メディアによると、中国の官製メディアがこの言葉を用いたのは過去3回で、いずれも中印国境紛争、ダマンスキー島事件、中越戦争での武力衝突の直前だという。環球時報は官製メディアとは言い難いものの、危機感をあおる同紙の体質を如実に示した。

演習の規模は?

 この報道に対し、台湾の国防部(国防省に相当)はただちに「毎年度の定例的な訓練だ」と発表、「中共の文攻武嚇に踊らされないように」と呼びかけた。ただ、前回4月に中国側が「台湾海峡での実弾演習」を宣伝した際に積極的に公表した部隊の規模や演習項目などは公表せず、19日の記者会見で問われても答えなかった。

 台湾の中国時報は23日付で、中国海軍の艦艇40隻以上が20、21の両日にかけて台湾海峡を南下したと報じた。艦艇の航行は、台湾が中国大陸近くで実効支配する島に向かう航空便からも目視できたという。

 過去にこれほど多数の艦艇が一度に海峡を通過したことはなく、同紙は演習に参加していた艦艇が台風10号を避けるために台湾海峡を南下したとの見方を示す一方、「演習規模が非常に大きかったことを示す」と分析した。この報道に関し、国防部は反応していない。浙江海事局は20日、同日で演習が終了したと発表した。

実態は藪の中

 一方、台湾の中央通信社は19日、演習は「台湾への武力による威嚇は虚偽で、実際は日米安保に向けたものだ」とする記事を配信した。記事は「安全保障問題に詳しい関係者」の分析として、演習海域を台湾方向ではなく尖閣諸島(沖縄県石垣市)を中心に移動させれば、演習の中心地が宮古・石垣水域になると指摘。参加部隊の規模と演習項目から見れば、「演習の重点は、太平洋側から海空軍が(東シナ海に)進入するのを遅らせることにある」と分析した。その上で、台湾攻略に必要な上陸作戦とは全く異なり、「完全に日米安保に対抗するものだ」と強調した。

 この関係者は、中国の軍事演習とみればすぐに台湾への圧力と見なすのは「条件反射的な思考」で、国際環境での米中対立という要素を無視するものだと批判している。

 演習について、一部台湾メディアは、同時期に米ハワイ沖で開催され、今年は中国のオブザーバー参加が認められなかった「環太平洋合同演習」(リムパック)に対抗するものだとの見方も示している。ただ、演習が途中で切り上げられた可能性が高い上、中台の当局が双方とも意図的な情報の発信と制限を行っているとみられることから、演習の目的が実際にどこにあったのかは「藪の中」に終わりそうだ。(台北支局 田中靖人)