毛沢東の長男に哀悼をささげた正恩氏、「終戦宣言」を急ぐ狙いは…非核化の膠着も

激動・朝鮮半島
朝鮮戦争勝利65周年(停戦、27日)に際して平安南道檜倉郡の中国人民志願軍烈士陵園を訪れた金正恩朝鮮労働党委員長。日時は不明。朝鮮中央通信が27日報じた(朝鮮中央通信=朝鮮通信)

 【ソウル=桜井紀雄】朝鮮戦争の休戦協定締結から65年を迎えた27日、北朝鮮メディアは、中国の毛沢東元国家主席の長男で、朝鮮戦争で戦死した毛岸英氏の墓に献花し、恭しく黙祷(もくとう)する金正恩朝鮮労働党委員長の姿を大きく報じた。

 「朝中関係は血と命をささげて結ばれ、前例なき特殊で強固な親善関係に発展している」。正恩氏はこう述べ、強調した。「中国のような頼もしい兄弟の国を持つことを誇らしく思う」

 正恩氏は米朝首脳会談以降、中朝国境都市を中心に地方視察に邁進(まいしん)してきた。中国と経済的結び付きを一層強め、一方的非核化を迫る米国を牽制(けんせい)しよう-とのメッセージが読み取れる。

 一方、27日付党機関紙、労働新聞の社説では、対米敵視の文言がなりを潜め、9月9日の建国70周年まで「時間は残っていない」として「経済建設大進軍に拍車を掛けるべきだ」と総力を挙げた経済再建が呼び掛けられた。正恩氏は視察でも「自力更生」を強調しており、米国主導の制裁緩和は9月までには間に合わないと踏んでいるようだ。

 代わって北朝鮮が「信頼醸成のための必須の要求だ」と米国に再三求め、韓国にも「傍観するな」と迫っているのが朝鮮戦争の終戦宣言だ。韓国政府は「なるべく早期に終戦宣言が実現するよう関係国と協議している」(康京和=カン・ギョンファ=外相)との立場で、引き入れやすいとの計算もうかがえる。

 平和協定と違い、象徴的宣言にとどまるとみられているが、制裁緩和を国連に働き掛ける中国やロシアに大義名分を与える効果もある。「米国から終戦を勝ち取った」と建国70年の成果を国内に喧伝(けんでん)できる意味も大きい。

 だが、米政府はあくまで非核化の具体的道筋を示すまで応じない構えだ。「戦争終結」宣言で、トランプ大統領が昨年示唆した軍事的選択肢が封殺されるばかりか、北朝鮮の在韓米軍の縮小要求を招きかねない。

 具体的動きが見える北朝鮮の非核化措置は、正恩氏がトランプ氏に既に約束したミサイルエンジン実験場の解体に向けた動きだけだ。終戦宣言に応じるかをめぐって米朝の交渉が膠着(こうちゃく)化する恐れもある。