【緯度経度】南北・米朝首脳会談は「モチの前にキムチ汁からいただいている」と韓国保守派 ソウル駐在客員論説委員・黒田勝弘 - 産経ニュース

【緯度経度】南北・米朝首脳会談は「モチの前にキムチ汁からいただいている」と韓国保守派 ソウル駐在客員論説委員・黒田勝弘

夕食会で言葉を交わす、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長(左)と韓国の文在寅大統領=5月27日午後、板門店の韓国側施設「平和の家」(韓国共同写真記者団撮影)
 南北首脳会談や米朝首脳会談の後、韓国では対北協力、支援話が盛んだ。対北制裁状況はまるでそっちのけという印象だ。肝心の北朝鮮の非核化(核放棄)という確証はまだないのだから、いわば「捕らぬタヌキの皮算用」である。
 保守派は「キムチ汁からいただいている」と皮肉っている。韓国のことわざを引用したもので、食事にモチが提供されると早合点し、先に汁を飲んでのどを潤すことを指す。北朝鮮問題に照らせば、モチ(非核化)が食卓に上がる予定もないのに、キムチ汁(支援・協力)の方に関心が向いているというわけだ。
 2000、07年の過去2回の南北首脳会談でもそうだったが、南北関係改善で対北融和ムードが広がると決まってブームに便乗した各種の交流、支援アイデアが登場する。
 大方の韓国人は、今の北朝鮮とは一緒に暮らす気はないし、どこか面倒でイヤな相手と思っている。しかし、そんな「現実」よりも、同じ民族で貧しい相手だから交流や支援はすべきだという「理想」論が先に立つようだ。
 特に伝統的にマスコミや識者は民(たみ)を諭し導くことが大好きで、「南北関係あるべき論」があふれている。
 また、筆者の“韓国人論”でいえば、彼らは日頃から悲観論より楽観論を好む。その方が気が楽だからだ。悲観的な状況はそうなったときに考え対応すればいいのであって、最初から悲観するのは損ということか。せっかくの機会だからと、今回も楽観論で楽しもうとしているようにみえる。
 対北ほんわかムードのなかで、苦笑しながらもいささか深刻になったのは、児童・生徒の「北朝鮮修学旅行」計画だ。このほど与党圧勝で終わった地方選挙の際、同時に選ばれた各地の教育監(教育長)たちが「南北教育交流」の名で推進しようというのだ。
 左翼・革新系の文在寅(ムン・ジェイン)政権下、教育監たちもほとんどが親北路線で知られる韓国版・日教組ともいうべき教員労組「全教組」系になってしまったからだ。
 超・独裁国家で金日成(キム・イルソン)・金正日(ジョンイル)・金正恩(ジョンウン)父子3代の神格化が最大教育目標の北朝鮮に修学旅行に出かけ「教育交流」するという驚くべき発想が、教育責任者たちの間で真面目に登場しているのだ。
 「キムチ汁」のなかで1番人気の交流・支援アイデアは南北鉄道連結。これは南北首脳会談の“定番”みたいなもので、過去に一部は実現している。今回もまた、朝鮮半島を縦断しシベリア鉄道を経て「ヨーロッパまで行ける!」-などと楽しい話題に仕立てられている。
 「インフラ整備は制裁対象外」といった真偽不明の楽観論で制裁どこ吹く風だが、核武装を含め重武装の軍事独裁体制の北朝鮮相手に、鉄道建設は軍事とは無関係といわんばかりに支援が語られているのだ。
 鉄道といえば、日本統治時代にすでに南北縦貫鉄道(京義線)があり、京城(現ソウル)駅では北京やモスクワ行きはもちろんパリ行きの切符まで売っていた。それに現在は北朝鮮側にある東海岸の絶景・金剛山の観光には、ソウルから電車で行けた。南北は関係がよかった先年、共同で金剛山観光開発をやっている。鉄道連結をいうなら日本統治時代の「金剛山電気鉄道」をまず復元させてはどうか。これだと観光用だから制裁逃れできるかもしれない?