翻弄された駅が語る南北融和 鉄道連結して済む問題ではない

ソウルからヨボセヨ
北朝鮮で新たに建設された鉄道橋=5月30日(朝鮮中央通信=ロイター)

 韓国北東端に使われずに放置されてきた駅がある。東海(トンヘ)線南北出入事務所に併設され、北朝鮮の景勝地、金剛山(クムガンサン)地域に通じる猪津(チェジン)駅だ。北に10・5キロ行くと、北朝鮮の鑑湖(カムホ)駅である。金大中(キム・デジュン)・盧武鉉(ノ・ムヒョン)時代の南北融和の波に乗り、2007年には南北間の列車の試運転まで行われた。

 運行は、翌年に金剛山で北朝鮮兵による韓国人観光客の射殺事件が起き、暗転する。韓国からの金剛山観光が中断し、この地を通過する人もほぼ途絶えた。

 4月に外国記者団の取材で訪れた際、熱心に案内してくれた事務所所長の姿とともに印象に残ったのが駅の表札だった。裏側の表面がはがれ落ち、文字が判別できないほど朽ちていた。レールもさび付き、所々波打っていた。表側だけが新しいことに駅を維持する職員らの意地を感じさせた。

 文在寅(ムン・ジェイン)大統領は南北の鉄道を連結し、シベリア鉄道と結ぶ構想を描く。南北は26日、この駅周辺を含めて補修を進める方針で合意した。ただ、核実験場廃棄の取材のため、外国記者らが5月に乗った北朝鮮の列車は外の風景が見られないよう窓が遮断されたという。

 鉄道はつなげば済むものでなく、車窓の風景を楽しむ程度の沿線地域の開放が必要だろう。南北融和の理念だけに前のめりになれば、政治に翻弄される駅を生むだけだ。(桜井紀雄)