遺骨返還は「戦争の完全な幕引き」 米朝会談の成果と米国側は歓迎の声 

朝鮮戦争勃発68年
南北軍事境界線がある板門店で、朝鮮戦争時の米兵の遺骨を国連軍に引き渡す北朝鮮兵士=1993年7月(ロイター)

 米国にとり、朝鮮戦争に関して現在も懸案となっているのが、戦場で行方不明となったり捕虜収容所で死亡したりした米兵の遺骨返還だ。シンガポールでの米朝首脳会談で北朝鮮が戦争捕虜や行方不明米兵の遺骨の返還を表明したのを受け、退役軍人などからは「戦争の完全な幕引き」につながるとして歓迎する声が広がっている。

 トランプ米大統領が米朝会談での「大きな成果」として誇示する遺骨返還は、それ自体は北朝鮮が米国や同盟諸国に与えている安全保障上の脅威を低減するものでは一切なく、北朝鮮による「対米融和攻勢」の一環である側面が強い。

 ただ、今回の措置が米朝による非核化交渉の進展に向けた信頼醸成につながり得るのも事実で、トランプ政権は返還の早期実現を目指したい考えだ。

 朝鮮戦争では米兵3万6500人以上が戦死。国防総省の戦争捕虜・戦闘時行方不明兵集計局(DPAA)によると18日現在、戦死者とは別に7697人が行方不明となっている。

 北朝鮮は1990~94年に約400人分の遺骨が混在しているとみられるひつぎ208基を米国に引き渡したほか、96~2005年に33回にわたり行われた米朝合同の遺骨収集活動でひつぎ229基分が回収された。07年にも遺骨7体分が北朝鮮から引き渡されている。

 北朝鮮を含め各戦場で収集された米兵の遺骨は、ハワイ州真珠湾のヒッカム基地にあるDPAAの施設でDNA鑑定などにより身元を特定。遺族が本人だと確認した場合、ワシントン近郊のアーリントン国立墓地など遺族が希望する場所に埋葬される。

 朝鮮戦争に関しては、これまでに459人分の遺骨の身元が特定されたが、ハワイの研究施設では今もひつぎ189基分の遺骨が身元を特定できないままだ。

 一方、北朝鮮は米国に対し現在、米兵の遺骨約200体分を保管していると伝えており、これらが近く返還対象となる見通しだ。

 在韓米軍関係者は23日、南北の軍事境界線がある板門店の共同警備区域(JSA)に遺骨を入れる木製の箱約100個を輸送したことを明らかにした。また、遺骨を韓国の米軍烏山基地から米国に輸送する際に納める金属製のひつぎ158基を同基地に搬入したとした。

 今回の遺骨返還について、1950年に仁川や長津湖などの最前線で戦ったという南部バージニア州在住の元海兵隊員(87)は産経新聞に「素晴らしいニュースだ。これを機にトランプ大統領が北朝鮮との関係を正常化させ、全ての遺骨の返還が実現することを望みたい」と語った。(ワシントン 黒瀬悦成)