「金王朝が滅ぼされない自信持ち、正恩氏は米朝会談臨んだ」 加藤達也元ソウル支局長

茨城「正論」友の会
茨城「正論」友の会で講演する産経新聞の加藤達也編集委員=16日午後、水戸市南町(永井大輔撮影)

 茨城県から日本のあるべき姿を考える「茨城『正論』友の会」の第12回講演会が16日、水戸市南町の水戸セントラルビルで開かれた。「勝負に出た金正恩政権 日本はこの危機を迎え撃てるか」と題して、産経新聞社元ソウル支局長の加藤達也社会部編集委員が講演し、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長の思惑と、朝鮮半島をめぐる激変が日本にどんな危機をもたらすのか、今後を展望しながら解説した。

 講演会には、茨城県議や市議、産経新聞の正論路線に賛同する読者ら約120人が参加。講演後には参加者から質問が相次ぎ、約30分延長された。

 新たに茨城「正論」友の会の会長に就任した笠間稲荷神社宮司の塙東男氏は「志をともにする皆さんと力を合わせて一生懸命進んでいきたい」とあいさつ。続いて、7月から産経新聞社正論調査室長に就任する有元隆志編集局総務が「平成を振り返りつつ、日本がどのように進んでいくべきかをテーマに目前に迫った危機を考えていかなければならない」と述べた。

 加藤編集委員は講演で、12日の米朝首脳会談に触れ、「北朝鮮は対話に『引きずり出された』のではなく、韓国と日本という人質がある限り、米国は北朝鮮を攻撃することはないと見切った上で、金王朝が滅ぼされることはないという自信を持って会談へ臨んだ」と分析。日本の今後については「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化(CVID)」が会談で言及されなかったことや、北朝鮮が裏切りを繰り返してきた歴史から、「『融和か対決か振れ幅の大きい不安定な状況に突入する』ということがこれからの大きなテーマとなる」と強調した。

 笠間市から来た中野静さん(61)は「実際に現場を知る人の話を生で聞くことができて、曖昧な自分の知識がより鮮明になった」と話した。

 茨城「正論」友の会では今後も講演会などを開催。問い合わせは、茨城「正論」友の会事務局(産経新聞社水戸支局内)(電)029・221・7158。

(永井大輔)

 講演の要旨は以下の通り。

現在の朝鮮半島情勢

 韓国では朴槿恵(パク・クネ)政権下の密室政治や経済格差の極大化により、若者らが文在寅(ムン・ジェイン)氏を支持。文氏は北朝鮮とやがて統一しようという考え方の持ち主で、北朝鮮は韓国を「財布にしてしまおう」と考えている。

金正恩政権が「対話」に乗り出した背景

 金正恩朝鮮労働党委員長は3つの事情から対話に乗り出した。

 まず、金正恩氏の統治の目的だ。金正恩氏は身の安全が保証され、長期にわたって君臨し、普通の国の指導者のように国内外で「尊敬」されたいと願っている。

 次に、国内情勢が成熟し、脅威となる者を排除できたことだ。(異母兄の)金正男(ジョンナム)氏らを排除し、自らの統治スローガンである「核と経済の並進路線」も昨秋、「核戦力が完成した」として「達成」したとしている。

 そして、国外要因としてトランプ政権と文政権の誕生が挙げられる。米国の軍事政策を「韓国と日本という人質がいる限り、攻撃はない」と見切り、とにかく「北朝鮮と対話したい」という文氏が大統領となった韓国を、北朝鮮は当面の間盾に、中期的には財布になると判断した。

米国と日本に突き付けられた現実

 米国の中央情報局(CIA)は、北朝鮮が今秋までに米国の東海岸に届くミサイルを完成させると予想している。さらに米国では今秋、中間選挙を控えており、北朝鮮の核の脅威を除去するまでに残された時間は少ない。選択肢は対話か軍事行動だが、どちらを選んでも日本には課題が山積している。

 米朝戦争になれば、反撃能力の有無や憲法上の制約などがある。米朝が妥協した場合、日本に照準を合わせたミサイルを持つ北朝鮮への対応や拉致問題の解決に向けた道筋をつけられるかなどだ。

米朝、日朝間に多くの課題

 米国は北朝鮮の核放棄を信用していない。トランプ大統領の任期中に「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化」を達成するとしているが、果たして可能だろうか。米朝の関係は非常に不安定で、好転するか悪化するか読めない状態だ。

 一方、日本と北朝鮮の間にも多くの問題がある。最大の頼みは、政府の思い切った行動を促す世論の形成だ。目の前にある事実をしっかり捉え、正しい政治選択を求める有権者であることが重要だ。