極寒から灼熱へ… 北朝鮮取材の4カ月 もうサプライズ演出にはうんざり

米朝首脳会談
首脳会談に臨んだ北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長(左)とトランプ米大統領=12日、シンガポール(ロイター)

 米朝首脳の歴史的対面を翌日に控えた11日午後8時半。出稿作業が一段落し夕食に出かけようとした際、「金正恩朝鮮労働党委員長が市内観光に出る」と一報が入った。旧社会主義圏外での外交デビューを前に、混乱や不測の事態を招く可能性もある「夜のお散歩」を行う必要があるのか。半信半疑のまま現場に急行した。

 約1時間半後、正恩氏は報道陣とやじ馬の人だかりに笑顔で大きく手を振った。そのそばには、北の同行カメラマンがテレビ番組のADさながらに拍手と歓声をあおり、映像に収める姿が。外出の意義がようやく理解できた気がした。

 2月の平昌五輪から4月の板門店での南北首脳会談、今回の米朝首脳会談まで、現地報道を担当してきた。体感温度が氷点下20度を下回る極寒から赤道直下の灼熱の太陽の下まで取材環境はさまざまだったが、共通しているのは北朝鮮の“サプライズ”に振り回されたことだ。

 「美女応援団」出没情報を受け、競技場内外を駆け回った平昌。北代表団の動向も情報が錯綜(さくそう)し、何度も行き先変更を繰り返してはタクシー運転手をあきれさせた。

 南北会談では、正恩氏が文在寅(ムン・ジェイン)大統領を境界線の北側に引き入れたり、軽妙な冗談を披露したりするなどしてメディアプレスセンターに詰めかけた国内外のメディアを驚かせた。鼻白む過剰演出にも、会場運営ボランティアの女子大生は「こんなに感動的な場面に立ち会えたなんて…」と感激した様子。素直に喜ぶ彼女をどこかうらやましく感じたものだった。

 今回の正恩氏の会談前夜の外出は、こうした演出の極めつけともいえるものだろう。一方、12日の会談は一連の取材で初めて、北側が主導権を奪われ奇抜な言動を封印された印象も受けた。

 サプライズ演出は、もう食傷気味。次こそは非核化の進展に向けた真摯(しんし)な外交交渉を、現場の息づかいを込めて伝えたい。その時は喜んで駆けつけるつもりだ。どんな気候であろうとも。(シンガポール 時吉達也)