拉致・人権問題では“ゼロ回答” 進展は今後に持ち越し

米朝首脳会談
米朝首脳会談後に開かれた記者会見で、質問者を指名するトランプ米大統領=12日、シンガポール(AP)

 【シンガポール=時吉達也】12日の米朝首脳会談で非核化とともに注目された、日本人拉致問題をはじめとする北朝鮮の人権侵害問題に関する議論は、具体的な内容がほぼ示されず“ゼロ回答”に近い結果となった。トランプ米大統領は将来的な事態の改善に自信を示したが、今後の行方は見通せない。

 「家族を殺し、住民を苦しめる指導者をどうして『非常に有能だ』などといえるのか」。金正恩氏が会場を去った12日夕方、1人で会見に臨んだトランプ氏には、質疑応答の1問目から北の人権侵害に関連する厳しい質問が集中。「最も重要なのは非核化だ」「今回の合意にはないが、必ず結果が出る」などと苦しい釈明を迫られた。

 会談にあたっては日本のみならず、国際社会で北の人権問題を取り上げるよう求める声が強まっていた。「金正恩は6人を返せ!」。会場のホテル前ではこの日、スパイ容疑で拘束中の韓国人の解放を求める団体の姿も。会談に先立ち、300を超える各国の人権団体などが北朝鮮に対し、劣悪な人権状況に終止符を打つ改革を求める書簡を連名で送っていた。

 一方、北朝鮮は会談を翌々日に控えた10日にも、拉致問題について国営ラジオで「すでに解決した」と強調。「白紙化された『拉致問題』なる御託を並べ立てている」と日本批判を強めた。人権問題の非難拡大を警戒する北朝鮮と、すでに米国人抑留者解放を実現させた米国。問題解決の進展は、今後に持ち越された。