文在寅氏訪日・日韓宣言20年で判断 徴用工像の設置阻止 慰安婦像は放置、日韓合意無視

歴史戦
1日、釜山の日本総領事館前で「徴用工」の像の設置を訴える労働団体のメンバーら像(名村隆寛撮影)

 日本政府が韓国に対し「不適切だ」と再三、懸念を伝えていた釜山の日本総領事館前への「徴用工像」の設置が韓国当局に阻止された。「外国公館の安寧の妨害や威厳の侵害を防止するための措置」を義務づけたウィーン条約に沿った当然の措置だが、背景には日韓関係の一層の悪化を避けたい韓国政府の事情がある。

 元徴用工の個人請求権は1965年の日韓請求権協定で消滅し、日韓政府間では解決済みだ。韓国の歴代政権も、この政府見解を踏襲してきた。

 韓国の文(ムン)在寅(ジェイン)大統領は当初は個人的に、元徴用工の請求権について「個人の権利は残っている」との考えを表明したが、公式の立場ではそれまでの政府見解に従う姿勢を示している。

 日韓関係は、慰安婦問題をめぐる日韓合意の精神に反しソウルの日本大使館前に加え、2016年に釜山の日本総領事館前にも慰安婦像が設置されたことで一層悪化。先月には河野太郎外相や外務省の金杉憲治アジア大洋州局長が訪韓し、徴用工像設置の動きへの懸念を韓国政府に伝えた。

 韓国政府も「外交的な摩擦を呼ぶ可能性が高い」(韓国外務省)と、設置されれば対日関係の一層の泥沼化は不可避だと考えていた。しかも、今月には東京で日中韓首脳会談が予定されており、文大統領が就任後、初めて訪日する。

 さらに今年は、小渕恵三元首相と金大中元大統領による日韓パートナーシップ宣言から20年。文大統領は当時の対日関係を理想としているとされ、河野外相との会談でも、今年が「意味深い年」であると発言している。韓国政府は、徴用工像設置で日韓関係をよりこじらせれば「国益に反する」と判断したようだ。

 総領事館前への設置阻止は日本としては当然の措置であり、後は「対日外交摩擦を考慮する」という韓国政府が判断すべきことだ。

 ただ、日本大使館と総領事館の前には、国際条約と日韓合意に反して、現在も慰安婦像が放置されている。徴用工像の阻止以前の問題である日韓間の重要な懸案は残されたままだ。(釜山 名村隆寛)