【南北首脳会談】文在寅氏自賛も非核化の具体策なく - 産経ニュース

【南北首脳会談】文在寅氏自賛も非核化の具体策なく

「板門店宣言」に署名し、韓国の文在寅大統領(右)と抱擁する北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長=27日午後、板門店の韓国側施設「平和の家」(韓国共同写真記者団撮影)
 「われわれは、揺らぐことのない道しるべを打ち立てた」。27日、文在寅大統領が自賛した「板門店宣言」には、想定されたあらゆる議題での合意が盛り込まれ、成果が誇示された。しかし、最も注目された北朝鮮の非核化については具体的な行程が示されず、米朝首脳会談に向けた今後の交渉では曲折も予想される。
 宣言は(1)南北交流の促進(2)朝鮮半島の緊張緩和(3)平和体制の構築-の3章で構成。各項目で、両者にとって「満額回答」ともいえる合意がずらりと並んだ。
 軍事境界線周辺の非武装地帯(DMZ)での宣伝放送やビラ散布の中止、南北離散家族の再会事業などについては、開始時期を明記。次回の首脳会談や軍事高官協議の具体的なスケジュールも示した。
 期待値の“ハードル”を下げた演出が、宣言の価値を高める要因となった可能性もある。会談の準備委員長を務めた韓国大統領府の任鍾●(=析の下に日)秘書室長は「共同声明の発表形式は合意内容の水準次第」と前日まで慎重な姿勢を強調していたが、ふたを開けてみれば両首脳は会談開始前から、合意への自信を示唆する発言を連発。過去2回の会談では深夜や翌日にずれ込んだ発表が夕食会前に行われる異例の事態となった。専門家からは「前日までに完成済みだったのではないか」と訝しむ声も上がった。
 しかし、主題である「非核化」のみに目を向ければ、宣言には「共通の目標を確認」「国際社会の支持と協力を得る」など漠然とした文言が並ぶ。宣言署名後の共同発表でも、金委員長は「核」に一度も言及せず、韓国側との温度差が表面化した。
 朝鮮半島の歴史に名を刻んだ今回の会談は、交渉促進の雰囲気を醸成し米朝対話にバトンをつなぐ一定の役割を果たした。同時に、「完全かつ検証可能で不可逆的」な核廃棄を求める米国と、保有兵器の削減についてこれまで一切言及していない北朝鮮の交渉がゼロからのスタートを余儀なくされることも示したといえる。(高陽 時吉達也)