ASEAN28日に首脳会議、南シナ海「早期結論期待」 中国の管轄権めぐり攻防へ

 

 【シンガポール=吉村英輝】東南アジア諸国連合(ASEAN)は28日、シンガポールで首脳会議を開く。終了後の議長声明は、一部加盟国が領有権を争う南シナ海問題で、平和的解決を目指し中国と協議中の行動規範について「早期の結論」に期待を表明する見通しだ。ただ、中国は独自の「九段線」などを根拠に同海の管轄権の主張を続け、軍事拠点化を推進する構えを崩していない。攻防の終わりは見通せない。

 先月に発行された中国の学術誌『科学通報』は、新たに発見された1951年の中国の古地図で、南シナ海の全域がU字線で囲まれていたことから、「南シナ海での中国の主権を完全に示すものだ」とする研究者らの論文を掲載した。

 中国のこの主張は新しいものではない。1940年代に当時の中華民国政府が引いた11本の境界線は、中華人民共和国が引き継いで9本に修正した「九段線」となり、近年に南シナ海の管轄権主張に使われた。

 中国は、この「九段線」が具体的にどこを含むのか明確にせず、インドネシアなどとの対立を避けてきたが、この古地図を理由に、領有権の主張をより明確に打ち出す可能性がある。

 もっとも、オランダ・ハーグの仲裁裁判所は2016年、「九段線」を含め、中国の南シナ海における主権主張は、歴史的にも根拠がないと裁定している。

 豪ニューサウスウェールズ大のセイヤー名誉教授は、このタイミングでの中国研究者の“新発見”発表が、行動規範をめぐる協議の「著しい頓挫」を招きかねないとする。

 ASEANと中国は昨年、行動規範の策定で合意し、年内にも具体的な条文を策定するとして協議中だが、ASEANが求める法的拘束力を中国は否定したまま。「九段線」の議論を蒸し返せば、中国にはさらなる時間稼ぎとなる。

 ASEANの昨年の議長国フィリピンは、中国からの経済援助の見返りに、仲裁裁定の「棚上げ」に応じた。一方、今年の議長国シンガポールは、一貫して「法の支配」を重視する立場で、中国の望み通りの議論は期待しにくい。

 海洋安保に詳しい、ラジャラトナム国際研究所(シンガポール)のコリン・コー氏は、中国が行動規範に求める効果は「南シナ海問題への第三者の介入の阻止」と指摘。「中国を国際法に従わせる力が不在という状況は変わらない」と指摘する。