北朝鮮の表明 核保有国宣言ではないか

主張
北朝鮮の核実験場廃棄のニュースを映し出す大型ビジョン=21日午後、東京・秋葉原駅前(吉澤良太撮影) 

 北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長が、核実験と大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射実験を中止し、核実験場を廃棄すると表明した。金氏が国内向けに「中止」を口にするのは初めてだ。

 ただしその中身は「世界的な核軍縮に向けた重要な過程」で、「核実験の全面中止の努力に合流する」のだという。「わが国に対する核の威嚇がない限り核兵器を絶対に使用しない」ともいう。

 これは、「核保有国宣言」に他ならない。

 国際社会が北朝鮮に要求しているのは、核兵器を含む大量破壊兵器とあらゆる弾道ミサイルの完全かつ検証可能で不可逆的な廃棄である。その意味では、事態は一歩も前に進んでいない。

 トランプ米大統領は核実験の中止などを「大きな進展」と受け止める一方で、非核化の具体的な行動が確認できるまで「最大限の圧力」を緩めない方針だ。安倍晋三首相も「前向きな動き」と歓迎したが、「基本方針に変わりはない」と強調した。

 当然である。北朝鮮はこれまでも米国などと交わした核開発凍結、核放棄の約束を破り、核開発を進めてきた。指導者の言葉に一喜一憂することは禁物だ。

 米朝首脳会談が開催の運びとなったのは、北朝鮮が核廃棄への協議に応じる姿勢を示したからだ。先の日米首脳会談でも、その要求貫徹を確認した。

 完全な非核化が達成されるまで日米は最大限の圧力を継続しなくてはならない。

 北朝鮮は2012年の憲法修正で、自らを「核保有国」と明記している。果たして、この条項を削除する考えがあるのか。

 日本を射程に収める中距離弾道ミサイルなどは実験の中止対象に含まれていない。これらも国連決議違反である。生物・化学兵器の廃棄についても言及がない。日本にとっては、最優先課題である拉致問題の解決も譲れない。

 27日には、非武装地帯の板門店(パンムンジョム)で南北首脳会談が開催される。

 北朝鮮の指導者が、初めて韓国側に足を踏み入れる歴史的な機会となる。

 韓国の文在寅大統領に求めたいのは、国際社会の要求はあくまで核・ミサイルの完全廃棄であり、その実現まで国際社会の制裁の環(わ)が緩まることはないと、金氏に理解させることである。