英世論は分断のまま メイ首相は対露強硬で求心力回復へ

英EU離脱
モスクワのロシア外務省に呼び出され、対抗措置の通告を受けたロシア駐在の英国大使=17日(タス=共同)

 【ロンドン=岡部伸】欧州連合(EU)離脱まで残り1年となる中、英国内では依然として離脱派と残留派の対立が続く。メイ政権内でも、離脱最終合意案の国民投票を求める意見がある。メイ首相は英南部でロシア元スパイらが襲撃された事件にロシアが関与したとして露外交官を国外追放する異例の強硬制裁措置を取るなど、EU離脱をめぐって低下する求心力回復に全力を挙げている。

 2016年6月の国民投票では、離脱派が訴えた「急増する移民が生活を脅かしている」との主張が労働者階級の支持を集めた。結果、離脱支持が51・9%と残留支持(48・1%)をわずかに上回り、英国はEU離脱への道を歩み始めた。

 だが、今年1月に調査会社ICMが英紙ガーディアンの委託で行った世論調査では、英国民の47%が離脱の最終条件が判明した時点で離脱の是非を問う国民投票実施を支持した。このように残留派を中心に再度の国民投票を求める声が強く、離脱をめぐる国民の意見は分かれたままだ。政権内部でも、メイ氏が目指す欧州単一市場と関税同盟からの撤退は国民投票後に決定したもので、国民からは再度投票機会を持つべきだとの声が出ている。

 キャメロン前首相の辞任後、後任首相に就任した残留派のメイ氏は、残留派のハモンド氏を財務相に起用。一方で離脱派を主導したジョンソン氏を外相に抜擢するなど「挙党態勢」を取ったため、閣内の意見がまとまっていない。離脱交渉での指導力を確保しようと昨年6月に総選挙を行ったが、労働党が若年層に支持を広げて保守党は過半数割れとなり、かろうじて少数政党との閣外協力で政権を維持したが、メイ氏の求心力は大きく低下。閣内不一致に拍車がかかった。

 党内では、EUの影響力を排除する強硬派と、EUとの通商関係継続を求める穏健派との綱引きが続いており、離脱交渉の行方によってはメイ氏を辞任に追い込み、党首選による首相交代を訴える動きもある。

 メイ氏がロシア元スパイ襲撃事件で露外交官23人を一斉追放したのも、ロシアに弱腰姿勢を見せれば求心力がさらに低下して政権運営に支障を来しかねないからだ。再び首相が代わることになれば、離脱方針も変更を余儀なくされるだけに、不安定な英国の内政状況もEU側との離脱交渉の行方を左右する要素となりそうだ。