英離脱まで1年 将来関係見通せず

英EU離脱
22日、ベルギーのブリュッセルで行われたEU首脳会議で、ユンケル欧州委員長(左)と話すメイ英首相(AP)

 【ロンドン=岡部伸、ベルリン=宮下日出男】英国が欧州連合(EU)を離脱するまで29日で残り1年。元露スパイらへの神経剤襲撃事件で結束を見せた双方も将来関係をめぐる協議では溝が大きく、その行方は見通せない。円滑な離脱が実現するかはなお不透明だ。

 「離脱交渉にもかかわらず、EUが英国との団結を示し、うれしい」。EUのトゥスク大統領は23日のEU首脳会議後、襲撃事件で英国の見解を全首脳が支持した成果を強調した。

 昨年3月29日の離脱通告後に始まった離脱交渉では双方の緊張が高まる場面が目立った。離脱条件を優先する「2段階」の交渉方式や未払い分担金の清算、離脱による激変緩和のための「移行期間」の終了期日など、英側が譲歩を迫られてきた感は強い。

 EUは23日、将来関係の交渉指針を採択。将来協議は警察・司法、外交・安全保障も対象で、襲撃事件は離脱後の協力維持の重要性を確認する契機となったともいえる。

 とはいえ将来協議が厳しさを増すのは必至。焦点は自由貿易協定(FTA)。英側は世界一緊密なFTAを目指し、単一市場と関税同盟から去っても経済的利益を極力維持する考えだが、EUは「いいとこ取りはありえない」と特別扱いしない姿勢を堅持している。

 英領北アイルランドとアイルランドの国境問題も難題だ。「第1段階」の離脱条件の協議で棚上げし、厳格な国境管理を避ける方策が見いだせない。EUは離脱条件を記す「離脱協定」に盛り込むため6月までの合意を要請。北アイルランドだけ関税同盟に残す案も示すが、英国は国の一体性を損なうため容認できない。

 一方、押し気味に交渉してきたEUも従来通りにいくかは微妙だ。加盟国が英国と持つ関係はさまざま。将来協議では各国の利害が従来以上に絡み合うためだ。

 オランダやドイツは英国と貿易関係が深く、ルクセンブルクは金融分野で結びつきが強い。マルタが英連邦の一員である一方、スペインは英国と領土問題を抱える。対露など安全保障も念頭にポーランドやバルト諸国は英国を重視する。

 将来関係については離脱までに大枠合意し、FTAを含め詳細を移行期間に協議する方針。だが、離脱協定がまとまらなければ、英国は無協定で離脱することになる。移行期間に入っても期限は2020年末まで。FTA妥結には5年以上要するともされ、再び混乱への懸念が高まる可能性もある。