メイ首相は「内憂外患」 まずは移行期間で紛糾必至 英キングス・カレッジ・ロンドンのメノン教授

英EU離脱
英キングス・カレッジ・ロンドンのアナン・メノン教授(政治学)(岡部伸撮影)

 英国の狙いは、欧州連合(EU)からの離脱により単一市場と関税同盟から抜けてもモノや金銭を自由に動かし、その恩恵を享受することにある。しかしEUが英国を特別扱いはしない原則論を堅持しているだけに困難を極めている。

 貿易協定は通常5年から10年かかる。本当に困難な交渉はこれからだ。昨年末、第1段階で合意したが積み残した問題は山積しており、通商協議など本丸の第2段階の交渉は課題を解決しながら、まず移行期間をめぐり紛糾するだろう。

 離脱する2019年4月以降に激変緩和のための移行期間の法的取り扱いが問題となる。EUから抜けても事実上、現状維持するため、いかに位置づけるか。リスボン条約50条に基づく2年間の交渉期間の延長などが検討される。さらに期間について英国は2年間を提案しているが、完全離脱後のEUとの貿易ルールを定める通商協定をまとめるには最低5年かかる。英国は延長して交渉を続ける意向だが、EU側は「遅くとも20年12月31日までに終了」と期限を区切っている。新たな関係に入る20年末~21年初頭に再び英国がEUと最終合意に至らないまま離脱する「クリフエッジ」の危険性が再燃するだろう。国内では移行期間を認めない強硬派もいる。メイ英首相はEUと駆け引きしながら、強硬派にも配慮する内憂外患を迫られる。

 将来関係の交渉は3月から始まるが、EU側が事実上の交渉期限とする今年10月までに協定締結は不可能だ。予備的な大枠を協議して本格的交渉は移行期間に入ってからとなる。英国が目指す貿易協定のモデルはEUとカナダのFTA。これにプラスαで金融サービスを加えた前例のない新たな独創的な協定を目指す。

 英国はともにEUを築いてきたという実績があるほか、離脱後もEUにとって安全保障や対テロでも重要な国である。共通通貨ユーロを採用せず、域内での自由な移動を認めたシェンゲン協定を結ばなかった際と同様に「特別な関係」を維持しつつEU市場で金融サービスが展開できるよう求める。(聞き手 岡部伸)