合意優先 英・EUともに妥協 課題積み残し今後も続く難交渉

英EU離脱
8日、ブリュッセルのEU本部で握手を交わすメイ英首相(左)とEUのユンケル欧州委員長(AP)

 【ロンドン=岡部伸、ベルリン=宮下日出男】英国の欧州連合(EU)離脱交渉は、離脱条件をめぐり欧州委員会と英側が基本合意したことを受け、最初の大きなハードルを越えた。ただ、交渉期間が少なくなる中、双方が合意を優先させるために歩み寄った形。積み残した課題もあり、今後も難交渉は続く。

 「ここに至るには双方のギブ・アンド・テークが必要だった」。メイ英首相は8日、急遽(きゅうきょ)設定された記者会見でこう述べた。ユンケル欧州委員長も「互いに耳を傾け、それぞれが立場を調整した」と語り、合意は双方の妥協の成果とした。

 6月に始まった離脱協議で当初最大の難点とされたのが未払い拠出金の精算。600億ユーロ(約8兆円)相当とされるEUの要求に折れたのは英側だった。英国は離脱後2年間の移行期間を設け、その間のEU予算の拠出金約200億ユーロを払う案を示したが、最終的にEUの要求にほぼ沿った。

 英国の譲歩の背景には離脱決定後の経済の急速な減速がある。今年の英国の国内総生産(GDP)はフランスに抜かれて世界5位から6位に転落すると予測され、離脱で経済が強くなるとの離脱派の主張に冷や水を浴びせた。産業界では経営環境の不透明感払拭のため、来春までの移行期間合意を求める声も強まった。

 一方、EU側でも英国が離脱協定を結べずに離脱する事態や政権基盤が脆弱(ぜいじゃく)なメイ氏への不安が上がり、“政治決着”を図る必要があった。合意では在英EU市民権保護のために求めたEU側の司法管轄権の主張を後退させ、EU司法の判断を仰ぐか否かは英国裁判所の判断に委ねた。

 ただ、最後の争点となった英領北アイルランドとアイルランドの国境問題では自由往来を保つ方針を確認したが、具体策は将来協議に事実上棚上げした形だ。メイ氏の土壇場の説得に政権を支える北アイルランドの地域政党が応じたものの、同党側は合意後、「もっとはっきりさせたい課題があった」と漏らした。

 トゥスクEU大統領は8日、合意を歓迎する一方、「最も困難な課題がまだ待ち受けているのを忘れてはならない」と強調した。