未払い分担金めぐり紛糾 第2段階へ 英EU離脱交渉の最大の争点

 

 【ロンドン=岡部伸】英国の欧州連合(EU)離脱交渉は、EUが英国に支払いを求める巨額の未払い分担金をめぐり暗礁に乗り上げている。「脅されて支払ってはならない」(フォックス国際貿易相)との英国側に対し、EUも「事態が理解できないなら、英国民を教育する」(バルニエ首席交渉官)と双方とも譲歩の姿勢はみえず、「交渉最後まで議論が続く」(デービス英離脱担当相)と舌戦がヒートアップしている。

 8月末の第3回交渉は、10月までに「第1段階」に道筋をつけ、貿易など将来の関係を協議する「第2段階」に移行する段取りだった。第1段階の重要論点は(1)英国の未払い分担金(2)英国に住むEU市民とEUに住む英国市民の権利保障(3)英領北アイルランドとEU加盟国アイルランドとの国境問題-で、交渉の結果、(2)と(3)は「いくらか進展した」(ロイター通信)。

 だがバルニエ氏は、8月31日、英国が分担金支払いの立場を明確にせず「イライラしている」と漏らし、10月以降、英国が求める通商協議に移ることは困難との見方を示した。これに対し、訪日中のフォックス氏は今月1日、企業は離脱交渉が進まないことに不満を募らせており、「最初の部分(分担金)で一定額を脅されて払うことがあってはならない」と批判した。

 デービス英離脱担当相も3日、英メディアに、「交渉は大きな進展があった」しかし「分担金の法的考えに大きな違いがある」「国際的義務は果たすが離脱以降、支払い義務はない」と反論した。

 すかさずバルニエ氏は3日、イタリアで、「EU単一市場から抜けることが重大結果をもたらすことを英国民は学ばなければならない」と挑発した。

 この発言を受けデービス氏は「英国批判はバカげている。そもそも今回は重大な進展があった」と再反論し、メディアを通じた駆け引きは過熱気味だ。

 EUは英国に、今後数年分の分担金や職員年金などの未払い分担金の精算を求め、その額は、英メディアによると600億ユーロ(約7兆8千億円)から最大1千億ユーロ(約13兆円)。一方、英国の準備額は最大500億ポンド(約7兆1千億円)と金額に大きな差がある。

 農業国で分担金より補助金が多いバルニエ氏のフランスと好対照に、英国は2015年度で補助金を差し引き、払った分担金は108億ポンド(約1兆6000億円)でドイツに次いで多い第2の予算貢献国だ。EUにとって英国の離脱はEU予算に穴をあけ、独仏など有力国につけが回るだけに、簡単に引き下がれない事情がある。

 英国も離脱を選択した昨年の国民投票で、離脱派がEUへの分担金が英国の財政を圧迫していると主張し勝利した手前、容易にEUの要求に応じられない。

 ガーディアン紙の世論調査では、300億ポンド(約4兆2600億円)以上の離脱費支払いは容認できないとの回答が7割を超えた。 デービス氏は5日、議会で「金額をめぐる議論は交渉の全期間を通じて続くと予想される」と述べた。しかし、実質2年間の交渉がつまずくと時間切れになり、英国は合意なくEUから離れる事態になりかねない。デービス氏は「法的には離脱後、支払い義務はないが、法的根拠を見いだせない場合でも『道義的責任』はある」と述べ、必要最小限を上回る額を支払う可能性を示唆した。

 「メイ氏が最大約500億ポンドの支払いに応じる意向」(サンデー・タイムズ紙)との報道も出た。

 ロイター通信は、EU幹部の「バルニエ氏が唱える負担金合意での『大きな進展』にはグレーゾーンがあり、柔軟に対応する余地がある」との談話を伝え、双方が妥協に転じる可能性もあると分析している。