ロシアにつけ込まれたトランプ氏側 強敵・クリントン氏の「醜聞」求め

ロシアゲート疑惑
ドナルド・トランプ・ジュニア氏(共同)

 【ワシントン=加納宏幸】米大統領選期間中にトランプ大統領の長男ドナルド・トランプ・ジュニア氏らがロシア人弁護士と接触した問題は、ロシアによる米大統領選干渉疑惑の手口の一端を浮き彫りにした。民主党のクリントン元国務長官という強敵を倒すための「情報」を渇望したトランプ氏側の思惑に、ロシア側がつけ込んだ構図だ。

  ■「重要演説」

 「クリントン家に関する重要な演説を行う。クリントン氏は夫の元大統領とロシア、サウジアラビア、中国から資金を受け取った」

 トランプ氏は昨年6月7日にこう予告した。今月公表されたジュニア氏のメールから、ジュニア氏がこの数時間前、「クリントン氏に不利になるロシアとの取引に関する情報」があると伝えてきたロシア側との接触を決め、メールで仲介者に伝えたことが分かった。

 ジュニア氏はロシア人弁護士のナタリヤ・ベセルニツカヤ氏と9日に会談したが、トランプ氏が13日に行うとした「重要演説」に中身はなかった。ジュニア氏はトランプ氏に会談について伝えなかったと説明したが、「不利になる情報」の存在について話していた可能性はある。

  ■9日の会談

 CNNテレビによると、会談の参加者は米側3人、ロシア側5人の少なくとも計8人。ロシア側の一人でロビイストのリナット・アフメトシン氏は旧ソ連の元軍人で、現在もロシア情報機関とのつながりが疑われる人物だ。AP通信に対し、会談出席を認めたうえで、ベセルニツカヤ氏が「民主党への不正な資金の流れ」を詳細に記した資料を米側に渡したことを記憶していると述べた。しかし、ベセルニツカヤ氏は資料を裏付ける証拠を示せず、ジュニア氏は「情報」への関心を失ったという。

 ジュニア氏によると、話題はロシアによる米国への養子縁組禁止措置や米国の「マグニツキー法」に移った。同法は人権侵害に関与したロシア人への制裁を盛り込み、2012年に成立。法の呼び名は不正告発の後に不審死したロシア人弁護士に由来する。プーチン政権は同法に対抗し、米国人によるロシア人の子供の養子縁組を禁じた。

 ■プーチン政権関与は

 米メディアによると、ロシア側は米連邦議員に接触し、マグニツキー法の撤廃を陳情してきた。ベセルニツカヤ、アフメトシン両氏はそのロビイング活動で知られている。

 会談へのプーチン政権の関与は不明。クリントン氏側へのハッキングでトランプ陣営とロシアの共謀を裏付ける証拠も出てきていない。しかし、民主党はジュニア氏とロシア側の接触で、プーチン政権が「クリントン氏の醜聞情報の提供をトランプ氏が歓迎しているとのメッセージを受け取った」(アダム・シフ下院議員)ことを問題視する。