「1%でも重くなると終わり」台湾、新型潜水艦建造で対中国抑止 「10年以内に」と総統肝いり 日本の支援期待も

 
高雄市の台湾国際造船が試作した潜水艦の船体の一部

 台湾海軍が進める主要艦艇の自主建造計画で、対中抑止効果の高い潜水艦に関心が集まっている。蔡英文総統が総統選の公約で、計画開始から10年以内に就役させると宣言。官民挙げてのプロジェクトで、予算総額は1兆円を超す可能性が高い。関係者からは、日本の支援に期待する声も出ている。(台北 田中靖人)

総額1兆円超え

 台湾は2001年に米ブッシュ政権(当時)とディーゼル潜水艦8隻の購入で合意したが実現の見通しが立たず、自主建造にかじを切った。蔡総統は候補者だった昨年10月、1500トン級の開発計画を発表。海軍は未発表だが2千トン級の開発を目指しているとみられる。来年から4年間で設計、その後の6年間で1隻目の建造と洋上試験を終えて就役させる構想を描く。

 国防部(国防省に相当)は自主建造艦の調達数や予算を明らかにしていないが、04年の資料によると、米国からの購入額の見積もりは総額約4100億台湾元(約1兆3千億円)。一般的に自主開発は完成品購入より高額になる。

 国防部が7月上旬に立法院(国会)に提出した報告書によると、材料や技術、装備など25項目のうち、台湾で調達できるのは外殻に使う高張力鋼板など19項目で、エンジンなど6項目は海外からの調達が必要。報告書は、戦闘システムの統合は、国防部傘下の「中山科学研究院」が行うとするが、関係者によると魚雷や対艦ミサイルなどの兵器は輸入になる可能性が高い。

 設計を担当する船舶海洋産業研究開発センター(新北市)の柯永沢執行長は、内外メディアへの説明会で「潜水艦は設計重量より1%でも重くなると終わり。設計段階で全ての搭載物を把握する必要があり、中国の圧力を考えると海外からの部品調達はリスクが高い」と話した。また、設計やシミュレーションはできるが経験による裏付けがないとして、海外からの協力の必要性を訴えた。

「100%自前で」

 一方、船体の建造を担うとみられる台湾国際造船(高雄市)の王海濤副総経理(副社長)は、産経新聞の取材に「20年以上準備しており、船体は100%自前で建造できる」と自信を示す。同社は03年と04年に、2600トンの潜水艦を想定した船体の一部を試作している。ただ、騒音低下などの特殊な技術は先進国の協力が必要だとした。

 台湾側の関係者らが期待するのが、日本の支援だ。オーストラリアへの「そうりゅう型」の売り込みが不調に終わったことで、日本の関連企業が台湾への部品や技術の提供に意欲を示すのではないかとみる。台湾造船の王氏は「最新鋭でなくとも『おやしお型』やそれ以前の技術でも国際市場では相当な水準だ」と関心を示す。

 関係者は、直接の協力を得るのが難しい場合でも、日本企業のOBを顧問として招聘(しょうへい)する方法などを検討しているもようだ。

【用語解説】台湾の潜水艦

 台湾海軍はオランダ製2隻、米国製2隻の潜水艦を保有する。米国製の2隻は第二次世界大戦直後に就役した旧式で、実用性は低い。オランダ製のズバールトフィス(剣竜)級(基準排水量約2400トン)も1980年代の進水で現在、延命改修計画が進む。自主開発艦は、水深の浅い台湾海峡での運用を想定すれば、日本のそうりゅう型(同2950トン)のような大型ではなく、2千トン以下で十分とされる。