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運動すると記憶力がよくなる!? そのメカニズムが研究から明らかに

 運動後に記憶力が向上するメカニズムを、このほどスイスの研究チームが解き明かした。どうやら運動の際に体内でつくられる「エンドカンナビノイド」と呼ばれる“脳内麻薬”が鍵を握っているようだ。

TEXT BY SANAE AKIYAMA

ND3000/GETTY IMAGES
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日常的な運動が、身体の健康だけではなく記憶や認知能力にいい影響を及ぼすことは、いまや誰もが知る常識だ。運動を日課にしている友人や家族が身近にいるなら、とても元気で頭が回る人たちが多いことに気づくことだろう。

このほどスイスにあるジュネーブ大学の神経科学者たちが、運動後に記憶力が向上するメカニズムをオープンアクセスのジャーナル誌「Scientific Reports」に公表した。運動によって活性化する「エンドカンナビノイド」と呼ばれる化学物質の作用により、記憶や学習に重要な「脳の海馬」におけるニューロン間の信号伝達能力やその形が、刺激の量に応じて変化・適応する仕組みが確認されたのだ。

脳内麻薬「エンドカンナビノイド」の効力

「スポーツと記憶の関係はどうなっているのか。それがわたしたちが理解したかったことなのです」と、研究を率いたジュネーブ大学医学部基礎神経科学部のソフィー・シュワルツ教授は説明する。

これまでの研究によると、スポーツが記憶力に影響するメカニズムには、身体のなかでつくられる「エンドカンナビノイド」と呼ばれる“脳内麻薬”が大きくかかわっていることがわかっている。持久力を試されるマラソンやサイクリングなどをする人たちの多くが報告する多幸感、またはランナーズハイを引き起こすとされる化学分子だ。

「エンドカンナビノイドは血液中を循環し、簡単に血液脳関門を通過します。そして特殊な細胞の受容体に結合し、多幸感の引き金となるのです。この分子は記憶処理のために主要な脳の海馬の受容体にも結合します」と、シュワルツ教授は説明する。

血液脳関門とは、血液中の有害物質を脳に入り込ませないようにするための、脳のセキュリティのような機能のことをいう。例えば、脳にとっての不要物、多くの細菌、大きなたんぱく質などは通り抜けることができず、抗うつ剤など特定の薬剤、アルコール、カフェインなどは通過できる。体内でつくられるエンドカンナビノイドは血液脳関門を難なく通り抜けて、直に脳に作用するというわけだ。

この研究では「新たな運動技能」を記憶できるかどうかが実験で試されている。わたしたちの日ごろの動作は運動技能の連続であり、例えば「食べ物を口に運ぶ」という幼児が学ぶ簡単なものから、「靴ひもを結ぶ」「タイピングする」「スマートフォンでゲームをする」などの高度なものがある。

新たな動作を習得するとき、わたしたちは1から10までのステップを頭を使って意識的に学習する「明示的学習」と、感覚的なもので無意識に学習する「暗黙的学習」をおこなっている。そして新たな運動技能の学習時に活発に働いている脳の部位が、記憶に重要な「海馬」と、運動機能に重要な「線条体」の回路だ。

ではスポーツの際に増えるエンドカンナビノイドは、動作を記憶するための脳の部位にどう作用するのだろうか?

激しい運動後のほうが記憶力アップに効果的

研究チームは、スポーツが運動学習に与える影響を調べるために、特に運動を日課としているわけではない若く健康で右利きの男性15人に協力しもらった。そして3つの身体運動のあと、記憶テストを受けてもらった。

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