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害虫に“組み込まれた退化”が農業を救う? 遺伝子組み換えされた幼虫で食害を防ぐ試みの賛否

ツマジロクサヨトウがまん延したアフリカでは16年以降、多くの発展途上国の生産者が殺虫剤の散布を始めざるをえなくなった。通常ならアフリカの小規模農家は殺虫剤を使わない。殺虫剤は人間の健康と環境の両方を損なう恐れがあるからだ。

こうしたなかザンビア政府は17年、ツマジロクサヨトウを農業用殺虫剤での駆除する目的で300万ドル(約3億1,665万円)を小規模農家に支給し、食害に遭った22万2,000エーカー(約898.4平方キロメートル)の農地で作物を植え替えた。FAOの報告書によると、ルワンダでは同じく17年、ツマジロクサヨトウの大量の卵を手でつぶすために軍隊が農場に配備された。

農業や環境の問題について情報提供などをする英国の非営利団体「Centre for Agriculture and Biosciences International(CABI)」の報告書によると、ツマジロクサヨトウはアフリカ諸国を含む44カ国に16年以降に侵入し、コメ、ソルガム、小麦、綿など80種類以上の作物を食べたという。

北米では、ツマジロクサヨトウは毎春フロリダ州やテキサス州の南端を出発してはるばるカナダまで飛んでいき、コメ、トウモロコシ、ソルガムの田畑を荒らす。

テキサスA&M大学で昆虫学を専攻する大学院生でツマジロクサヨトウの幼虫の駆除方法を研究しているアシュリー・テスノーいわく、ツマジロクサヨトウは通常であれば越冬できない。「ところが、ツマジロクサヨトウの個体数が急増し、大発生する場合があるのです」とテスノーは説明する。

「そうなると、大量のツマジロクサヨトウを駆除しなければ農場はたった数日で荒廃しかねません。こうした“ハルマゲドン”のような破壊的な大発生は毎年あるわけではないとはいえ、作物の全滅はありえるのです」

テスノーによると、彼女が博士論文で研究課題として取り組んでいるツマジロクサヨトウの遺伝子構造を詳しく知ることが重要だという。「Oxitecが放った遺伝子組み換えツマジロクサヨトウが、この昆虫の個体数を減らす上でどれだけの効果を見せるのか興味深いです」と、テスノーは言う。

化学薬品の散布より安全?

Oxitecには、これまでにも遺伝子組み換え昆虫の開発の実績がある。同社が遺伝子組み換え蚊の開発を始めたのは09年で、ジカ熱の抑制のために遺伝子ドライブ技術を用いたときにさかのぼる。

ジカ熱は、このウイルスをもつ蚊に刺されることによって感染する。妊婦が感染すると胎児に先天異常が生じる可能性がある。そこでOxitecの研究者は、効果が2~3世代しか続かない自己制御型の致死遺伝子をもつ第2世代の蚊を開発した。この遺伝子組み換え蚊のフロリダキーズでの放出は、人間の健康や環境への影響を米国環境保護局(EPA)が十分に考慮していないとする地元住民や一部の環境保護グループからの反対にもかかわらず、今年EPAに承認された。

EPAの承認後、Oxitecの最高経営責任者(CEO)グレイ・フランゼンは、デング熱やジカ熱を含む血液による感染症を媒介する可能性があるガの幼虫の駆除には、化学薬品の散布よりも遺伝子組み換え蚊の使用のほうが安全かつ安価であると説明している。

「わたしたちの目的は、そうした疾病を媒介する蚊を、各国政府やあらゆる規模の地方自治体が環境に害を及ぼさずに、また複雑で費用がかかる作業もせずに、効果的かつ持続的に駆除できるようにすることです」と、5月に発表したOxitecのプレスリリースでフランゼンは述べている。「この目的を果たすOxitecの技術の可能性は比類なきものであり、Oxitecは今回のEPAによる承認によって、米国におけるこの技術の利用実現に向けた第一歩を踏み出すことができます」

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