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西南極の巨大な氷河に「崩壊」の兆し さらなる海面上昇の危機が訪れる

崩壊の正確な予測はほぼ不可能

レルミットらは氷河の脆弱な箇所の特定に加え、こうした氷上の亀裂やゆがみが南極のほかの氷河に与える影響を予測するコンピューターモデルを作成した。

このモデルについてレルミットは、スウェイツ運河がいつ崩壊するか正確に特定することが目的ではないと説明する。現時点では正確な予測は不可能に近いだけでなく、氷河の周辺地域の気温と海水温を上昇させている気候変動のペースや南極海周辺の海流の動きなど、考慮すべき不確定要素が多く存在するからだ(2014年にワシントン大学のチームが『サイエンス』誌に発表した研究では、衛星画像データと数式モデルを使い、スウェイツ氷河を含む西南極氷床の崩壊を200~1,000年後と予測している)。

レルミットのモデルの狙いは、氷床のダメージを全球気候モデルに取り込み、海水面の上昇と南極の氷河の今後を予測することにある。「これらの氷河がどんなスピードでどの程度変化しているのかは、まだ解明されていません」と、レルミットは言う。「プロセス全体はわかっていないのです。この研究では氷床にできる割れ目のようなダメージを調べ、これが海面の上昇にどんな影響を与えうるかを考察しています」

「眠れる巨人」は目を覚ますか

氷河の動きの予測が難しい理由は、氷が固体と液体の両方として機能するからだと、ペンシルバニア州立大学で地球科学を研究するリチャード・アレイは指摘する(アレイはいずれの研究にもかかわっていない)。アレイは氷河の亀裂の入り方の研究について、氷河の崩壊時期に関する理解を深めてくれるという点で新しくかつ重要だと評価する。『WIRED』US版のメールでの取材に対し、アレイは氷河の動きの分析を橋の設計とを比較して次のように説明している。

「当然のことながら橋を崩壊させたくはありませんが、どんな条件下だと橋が崩壊するのか厳密な予測を出せと言われるのも困りますよね。だからこそ、安全性に十分な余裕をもって設計するわけです。とはいえ、スウェイツ氷河は人間が“設計”できるものではありませんから、大きな不確定要素と向き合うことになります。定量化することも大事ですが、破壊力学の問題であることを考えれば、いずれにしても予測を超えて驚かされる可能性があることを念頭に置かなくてはなりません」

自身の研究結果を受けレルミットは、環境に壊滅的な影響をもたらしかねない急激な変化の兆候がないか、南極の氷河を注意して見ていく必要があると考えている。

「これらの氷河は、いわば眠れる巨人なのです」と、レルミットはスウェイツ氷河とパインアイランド氷河のことを表現する。「このまま眠り続けるのか、あるいは目を覚まして海面の上昇という重大な結果を招くのか、わたしたちは興味をもって研究し始めたばかりなのです」

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