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西南極の巨大な氷河に「崩壊」の兆し さらなる海面上昇の危機が訪れる

「スウェイツ氷河は気候変動の影響を受けるとすぐさま変化が現れやすいので、この発見は重要なのです」と、ホーガンは説明する。「誘因のひとつは、暖かい海水が海上の氷の下へ入り込み、氷の融解を進行させることでした。海底に大規模な溝が刻まれていて、氷河の基部にまで続いています。溝が深くて大きいことで温度の高い海水が流れ込み、氷を融解する力が増すのです」

陸と海、双方からの調査

こうして米英合同チームは2019年の調査をまとめた2本の論文を、9月9日付けの科学専門誌『Cryosphere』に発表した。1本はホーガンが中心となって執筆し、ソナーによる画像データを使ったスウェイツ氷河の新しい海底地形図を詳述したものだ。

もう1本は別の調査グループのデータを取り上げたもので、通称「ツイン・オッター」と呼ばれるDHC-6型の飛行機で氷河の上空を飛行し、地中を探査するレーダーによって氷の下を探査した結果を分析した。こちらは氷河にかかる重力の変化を検知できる特殊な装置も使用し、氷下の岩盤の密度を明らかにしている。

コロンビア大学ラモント・ドハティ地球観測所のアソシエイト・リサーチサイエンティストで後者の論文の共同著者であるデビッド・ポーターによると、調査グループはスウェイツ氷河と、氷河と海が接する入江を上空から調査したという。ふたつの研究チームは、陸と海双方のデータを共有した。

「重力の変化を測定して、氷河と海底地形のマップを新たに作成しました」と、ポーターは語る。「水深測量による海底地形図と組みあわせて得られたデータから海底の地形が明らかになり、海底に深い通り道が刻まれたことで暖かい海水が陸へ向かって流れ込み、大陸棚を経て氷河へ行き着くことが判明したのです」

海底にできたこれらの溝は、最深部で深さ3,280フィート(約1,000メートル)、幅12マイルから25マイル(約19~40km)に及ぶという。「これがスウェイツ氷河が変容してきた理由のひとつなのです」

スウェイツ氷河やほかの氷河が今後100年のうちに崩壊するようなことはないだろうと、科学者たちは考えている。近い時期に崩壊するにしては、あまりに規模が大きいからだ。

ただ同時に、氷河の融解が増えたことで世界で徐々に海水面が上昇しつつあることは事実であり、これらは懸念すべき兆候だという。重要なポイントとなるのは氷河が融解していく速さ、そして気候変動が取り返しのつかない段階へと到達してしまうかどうかだ。

刻まれ始めたダメージ

「棚氷も脆弱になってきています」と、オランダのデルフト工科大学で地球科学と遠隔探査を研究する准教授のステフ・レルミットは言う。「棚氷は氷床の流れを押し止める役割を果たしています。棚氷が消えてしまうと氷河は流動できるようになり、氷が海へ流出してしまうのです」

レルミットはオランダ、フランス、米国の研究者からなるチームでスウェイツ氷河とパインアイランド氷河を研究し、過去21年分の衛星画像データを分析した。この結果、構造的な脆弱性を示す最初の兆候が明らかになった。棚氷にクレバス(氷河の裂け目)や割れ目ができていたのだ。

これらはこの先、棚氷の崩壊の予兆になるという。棚氷に見られるこうしたダメージはさらなる氷の損傷を生み、氷の流れを速めるという悪循環を生み出すことになるからだ。

9月14日付で『米国科学アカデミー紀要(PNAS)』に発表された調査報告書では、岩盤上を移動する氷原にどのように損傷が生じるか理解することが、氷河の崩壊がいつ起きるか知るために極めて重要だと論じられている。

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