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放射性廃棄物でつくる人工ダイヤモンドが、“数千年もつ電池”になる:革新的な技術への高まる期待と現実

 放射性廃棄物からつくり出した人工のダイヤモンドを使った電池の開発が進んでいる。完成すれば数千年にわたって電力を供給することが可能になるという。いったいどんな技術なのか。

TEXT BY DANIEL OBERHAUS

TRANSLATION BY CHIHIRO OKA

WIRED(US)

炭素14を使ったダイヤモンド電池の試作品。PHOTOGRAPH BY UNIVERSITY OF BRISTOL
炭素14を使ったダイヤモンド電池の試作品。PHOTOGRAPH BY UNIVERSITY OF BRISTOL

小型のドローンが2018年の夏、ストロンボリ島の火山の頂上付近に小さな“荷物”を落とした。シチリア島の北の沖合にあるこの島は火山島として知られており、過去100年にわたり噴火を繰り返している。

地質学者にとっては魅力的な研究対象だが、人間が火口付近でデータを収集することは危険だ。このためブリストル大学の研究チームは、火山活動を見守るためにセンサーを搭載した自動計測装置を使うことにした。この“ロボット火山学者”をドローンで山頂まで運び、次の噴火で破壊されるまで地震などを観測しようというのだ。

センサーを備えた装置はソフトボールほどの大きさで、チョコレートのかけら程度のサイズの原子力電池で動作する。「ドラゴンエッグ」と呼ばれるこの装置を使えば、噴火口のような危険な場所でも自然現象を観察できるわけだ。

数千年もつダイヤモンド電池

ブリストル大学教授で材料工学の専門家であるトム・スコットにとって、ストロンボリの火山は最初の挑戦となる。

スコットは数年前から、仲間の研究者たちとドラゴンエッグの原子力電池の開発に取り組んできた。化学反応によって電気をつくる化学電池とは異なり、スコットたちの電池は放射能を帯びた人工ダイヤモンドから放出される高速の電子を電力に変換する。このため電池の寿命は数千年で、充電も交換も必要ない。

スコットとブリストル大学の化学者ニール・フォックスは20年8月、ダイヤモンド電池の商用化に向けてArkenlightという会社を立ち上げた。爪くらいの大きさしかない電池はまだ試作段階だが、既存の原子力電池と比べて効率がよく、電力密度も高い。

スコットたちは電池の設計が決まり次第、量産に向けた生産設備を建設する予定だ。そして24年の市販化を目指している。

ただし、ノートPCのような身の回りにある電化製品に搭載されることはないだろう。スマートフォンのリチウムイオン電池やリモコンに入っているアルカリ乾電池はガルバニ電池と呼ばれ、短時間に大量の電力を供給する用途に向いている。

リチウムイオン電池は1回の充電で数時間しか放電できないし、数年経てば劣化が進んで充電容量は減少する。これに対して原子力電池の一種であるベータボルタ電池は、微量の電力を長時間にわたって発電できる。スマートフォンを動かすために十分な電力を供給するのは無理だが、電力をそれほど必要としないデバイスであれば、適切な放射性物質を使えば1,000年以上も動かし続けることが可能になる。

Arkenlightの最高経営責任者(CEO)のモーガン・ボードマンは、「電気自動車(EV)を走らせることができるかと言われれば、答えはノーです」と言う。大量のエネルギーを消費するものを動かしたいと思ったら、バッテリーの質量は車両よりはるかに大きくなってしまう。

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