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猛暑を引き起こす熱波にも、ハリケーンのように“名称”が必要だ:研究者たちが新たな仕組みの導入を目指す理由

 気温が38℃を超えるような猛暑をもたらす熱波に、ハリケーンのような名称を付けることが研究者たちによって提唱されている。一般への注意喚起が容易になり、対策を促すことにつながるというのだ。

TEXT BY SHANNON OSAKA

TRANSLATION BY CHIHIRO OKA

TWIRED(US)

DAVID 'DEE' DELGADO/BLOOMBERG/GETTY IMAGES
DAVID 'DEE' DELGADO/BLOOMBERG/GETTY IMAGES

2019年7月末に米国を襲った熱波では、メリーランド州で4人、アリゾナ州とアーカンソー州でそれぞれ1人が亡くなっている。このとき気温は急上昇し、一部の地域では体感温度が37.8~48.9℃にまで達したのだ。また、ニューヨーク市とワシントンD.C.では大規模な停電が発生し、エアコンが使えなくなった。

メキシコ湾に毎年やってくるハリケーンと同じように、最近は熱波でも多くの死者が出る。ただし、ハリケーンには「ハービー」や「サンディー」「マリア」といった覚えやすい名前が付けられるが、夏のすさまじい暑さは無名のままだ。

米国だけでなく世界中で猛暑が頻発するなか、気象学や公衆衛生の専門家、政治家などが熱波にも名前を付けることを提唱している。異常なまでの暑さは海に行く理由にはならず、命にかかわる問題であることを認識してもらうためだ。

世界的に熱波による死者は急増

世界保健機関(WHO)の試算によると、猛暑での死者は1998~2017年の20年で16万6,000人超に上る。イタリアとスペインでは2003年の猛暑で数万人が亡くなった。米国での死者は年間600人以上で、近年はハリケーンやトルネード、洪水などの犠牲者の数を上回る傾向にある。また、気候変動によって極端な猛暑が普通に発生するようになっている。

米国のシンクタンクであるアトランティック・カウンシルのディレクターのキャシー・ボーマン=マクラウドは熱波について、「気候変動に起因する広範かつ重大な問題ですが、ほとんど知られていません」と指摘する。「わたしたちは“サイレントキラー”と呼んでいます」

ボーマン=マクラウドは、地方政府やNGO、科学者などが参加するイニシアチヴ「Extreme Heat Resilience Alliance」で中心的な役割を果たしている。このイニシアチヴでは、予報段階で熱波の名称を決めて強さをランク付けするシステムの導入を目指しており、これによって一般への注意喚起が可能になると期待する。自治体にも、緊急避難場所として冷房の効いた施設を解放したり、高齢者などの見守りサービスを実施するといった対策を促せるだろう。

ハリケーンの進路の周辺に住んでいる人たちには、毎年やってくる危険な熱帯低気圧の名前と強さによる分類について知識をもつことが絶対に必要になる。ボーマン=マクラウドは、「わたしはフロリダに25年住んでいたので、カテゴリー1とカテゴリー3の違いを知っています。ハリケーンの影響を受ける地域の住民にとっては常識なのです」と言う。

熱波の危険性を伝えるために

一方で、熱波の危険性について具体的に理解している人は少ない。暑さで体温が過度に上昇すると血液の循環がうまくいかなくなり、脈拍が速まる。基礎疾患のある高齢者にとっては特に危険で、熱波が起きるとエアコンがないか壊れている家では老人が亡くなることが多い。気温が約38℃を超えると、若者や屋外で仕事をする労働者が熱中症で死亡することもある。

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