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原子力発電所のメルトダウンは過去のものに? 新型原子炉が拓くエネルギーの新時代

 理論的にメルトダウンによる事故が起きないという、新しい原子力発電所の研究開発が米国で進められている。実現の鍵を握るのは、大粒キャンディーのように個別に保護シェルで包まれた「トリソ燃料」だ。従来の原発のような巨大な構造物や広大な空き地なども不要とされており、新たなエネルギー源としての期待が高まっている。

TEXT BY DANIEL OBERHAUS

TRANSLATION BY MASUMI HODGSON/TRANNET

WIRED(US)

PHOTOGRAPH BY X ENERGY
PHOTOGRAPH BY X ENERGY

原子力発電所の原理は、どれも基本的には同じである。核分裂によって生じた熱を電力に変換する仕組みで、複数ある方法はどれも安全性と効率の微妙なバランスをとることが求められる。

原子炉が実力を最大限に発揮するには、炉心がかなりの高温に達する必要がある。仮に高温に耐えられずにメルトダウン(炉心溶融)を起こせば、環境が汚染されたり人々が死んだり、除染作業に何十億ドルもかかったりする危険性が生じる。

最近の事故は、東日本大震災の津波によって起きた東京電力の福島第一原子力発電所のメルトダウンで、それからまだ10年も経っていない。だが、今後数年で操業を開始する新世代の原子炉は、メルトダウンのような惨事を過去のものにしようとしている。

大粒キャンディーのような燃料

この新世代の原子炉は、現在の原子力発電所のものより小型で高効率であるだけではない。設計者によると、実質的にメルトダウンが起きない設計だというのだ。

その秘密は、何百万ものサブミリメートルサイズのウラン粒子が、個別に保護シェルで包まれている点にある。これは「トリソ燃料」と呼ばれるもので、放射性の大粒キャンディーのようなものだ。

トリソとは、物理的性質が方向によって違わないことを意味する「3構造の等方性=tristructural isotropic」の略である。この燃料は低濃縮ウランに酸素を混合したもので、その周囲は炭素とケイ素が交互に3層ずつ重なる炭化ケイ素でコーティングされている。

この燃料粒子はケシの実より小さいが、層構造のシェルによって原子炉内で起こりうる最も極限の条件下でも内部のウランは融解することがないという。

「事故の起きない原子炉」のメカニズム

米国のアイダホ国立研究所(INL)の「改良型ガス原子炉(AGR)燃料開発および適格性プログラム」でディレクターを務めるポール・デムコビッツは、次世代原子炉の最悪のシナリオをシミュレーションすることが主な仕事だ。彼は同僚たちとともにこの数年、トリソ燃料を原子炉に入れて超高温にするなどの適性検査を実施してきた。

現在の大半の原子炉は約538℃をはるかに下回る温度で運転されており、次世代の高温原子炉でも上限がおよそ約1,093℃の予定である。これに対してINLでは、トリソ燃料が1,760℃を超える原子炉でもちこたえることを証明した。2週間もの長期検査で、30万個のトリソ燃料粒子のうちコーティングを失った粒子はひとつもなかったという。

「新型原子炉の設計では、こうした超高温を超えることは基本的に不可能です。なぜなら超高温に達すると、原子炉がいわばシャットダウンするからです」と、デムコビッツは言う。「ですから、この原子炉の設計において超高温に耐えうる燃料を使えば、基本的に“事故の起きない原子炉”ができるわけです」

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