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人類がいなくなったあとも、人工生命が生き延びるために--テオ・ヤンセンと池上高志が語る人工生命の自我

 テオ・ヤンセンのつくるストランドビーストは“生物”である。プラスティックのチューブでできたこの生物はモーターやエンジンが付いているわけではなく、ただ風の力を使い、前へと進む。この動きを見ると人は“生命”を感じるのはなぜか--。「人工生命」をテオ・ヤンセンと池上高志が語った。

PHOTOGRAPHS BY YOUSUKE MORIMOTO

TEXT BY MAIKO IMAOKA

砂浜を動く巨大なプラスティックのチューブでできた“生物”。それらはチューブでできた脚や筋肉をもち、風の力を使って前へ進む。わたしたち人間が歩くときに筋肉4を動かすように、そのスケルトンのボディはなめらかに動く。その様子を見ると、多くの人間はそこに「生命」を感じるはずだ。

オランダの芸術家テオ・ヤンセンの「STRANDBEEST(ストランドビースト)」は、ヤンセンが独自に設計した複雑なモーションシステムにより、風の力を推進力に変えることで動く。オランダ語で砂浜を意味する“Strand”と生命体を意味する“Beest”の2語をつなげた造語で、彼が創る“生物”の総称を表す。

このプラスティックのチューブに生命を感じるのはなぜなのか。それはストランドビーストが生命的なアルゴリズムをもって動くからであり、これは池上高志の言う「ALife=Artificial Life(人工生命)」の考えに一致する。ALifeとは、自律性、進化、意識など、あらゆる生命現象の倫理を探究し、コンピューター技術や生化学によって人工的に「生命」のシステム、生命的なアルゴリズムの創出を目指すものだ。今回は「ALife=Artificial Life(人工生命)」の研究で世界を牽引する池上高志と、来日したテオ・ヤンセンのふたりが“生命”について語り合った。

人工生命は「繁殖」する

テオ・ヤンセン(以下、ヤンセン) わたしの仕事を「インテリジェント・デザイン」と言う人がいます。神の視点をもってストランドビーストをつくっていると言うんですね。ですがそれはわたしの知性への過大評価です。実際にわたしがやっていることは、朝起きて、いいアイデアが思い浮かぶと海辺へ行く。それだけのことです。

海辺を歩いていると、世界はいろいろなことをわたしに求めてきますが、わたしのやりたいことはたいしてうまくいきません。指揮をとるのはわたしではなくて、わたしはただ、チューブのやりたいことに従うだけです。これがまさに「進化」のプロセスだと思うんです。

池上高志(以下、池上) とてもいい表現ですね。ぼくも本当にそう思います。ホワイトボードに数式を書き出しているとき、自分が考えているというより、ホワイトボードがぼくに数式を書かせているような感じになるときがあります。

ヤンセン そうでしょう? わたしたちがクリエイティブである必要はないんですよ。アーティストにとって、「クリエイティブでなくてはならない」と考えることは、とてもストレスなことです。むしろ、ただ素材を見つめ、素材が求めることに従えばいいんです。といってもうまくいかないことは多いですが(笑)。それを何とかするためには「根拠なき楽観」が必要です。

テオ・ヤンセン-THEO JANSEN

 1948年オランダのスフェベニンゲン出身。デルフト工科大学で物理学を学んだ後、画家に転向、1990年より「生命体をつくる」思いに駆られ、プラスティックチューブでできた生命体「ストランドビースト」(以下ビースト)を生み出した。スフェベニンゲンの砂浜に生育し、風をエネルギーとして動くビーストは、さまざまな機能を身につけながら、約30年の間に進化を重ね、『アニマリス・〇〇』と名の付く、その種の数は50を超える。

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