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「火星の渓谷」は氷河に削られて生まれた? 生命の存在可能性にも影響する新たな学説

 火星の地表に多く残る峡谷。これらの谷が河川の流れではなく、氷河に削られてつくられたとする研究結果が発表された。火星がかつて生命が住めるような温暖で湿潤な星だったのか、それとも氷に覆われた凍えた星だったのか--。火星の気候を巡る議論に、いま新たな判断材料が加わった。

TEXT BY MATT REYNOLDS

TRANSLATION BY MITSUKO SAEKI

WIRED(UK)

PHOTOGRAPH BY NASA
PHOTOGRAPH BY NASA

あなたが知らなかったとしても無理はない。だが天文学者たちの間では、白熱の論争がずっと続いている。いったい何の話かというと、火星についての話だ。しかも、数十億年前の火星の気候の話である。

極域に張った氷に閉じ込められるかたちで火星に水が存在することは、かなり前から知られていた。しかし、この惑星に関してはさらに興味深い話がある。いまよりはるかに豊かな水に恵まれていたことを示す手がかりが残されているのだ。

論争の主な焦点となっているのは、火星にある複数の謎めいた峡谷である。これがもし、かつてこの星の上を縦横無尽に水が流れていたことを示す証拠だとすれば、火星に生命が存在した可能性は一気に高まるだろう。

しかし新たな研究によって、いまこうした推論に一条の光が投じられている。これによって長く波乱に満ちた火星の歴史の解明が、また少し近づくかもしれない。

太古の火星は「氷だらけの冷たい星」だった?

火星の南半球に、交差し合う数百もの谷が存在していることはすでに知られており、その光景はわたしたちが地球上で目にする河川流域によく似ている。これまで、地球外惑星の地質学的進化について研究する宇宙地質学者たちのほとんどが、火星にあるこうした峡谷は山々に沿って流れる川の水に削られてできたものだと考えてきた。

しかし、最新の研究結果が示唆するところによると、話はそれほど単純ではないようだ。論文の主執筆者であるブリティッシュコロンビア大学のアンナ・グラウ・ガロフレらの分析によって、火星の谷の多くが実は河川ではなく氷河によって削られたものである可能性が浮上したのだ。

これらの峡谷の成り立ちを知ることで、火星の歴史を深くさかのぼるための重要な手掛かりを得られる。火星の表面を縦横に走る谷は、どれも35億年から39億年ほど前に形成された非常に古いものなので、これらを調査することで当時の火星の様子がわかるはずだからだ。

これまで言われてきたように、峡谷が川の流れによって形成されたものであるなら、当時の火星は温暖で湿潤な気候だったことになる。つまり、地球外生物が生息しうる理想的な環境だったのかもしれないということだ。

しかし問題は、谷の存在から導き出されるエビデンスが、これまでに判明している内容と一致しないことである。火星の誕生期の気候を再現した数々のシミュレーションによって、当時の火星は寒冷で氷に覆われていたらしいことが明らかになっている。

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