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「手を丁寧に洗う行為」を、“ポストコロナ”の新常識にすることの難しさ

 手洗いという最もシンプルで簡単な感染予防策は、実践が非常に難しい対策でもある。新型コロナウイルスの感染拡大や第2波の到来を防ぎ、そしてウイルスと共存する社会を生きていくためにも、丁寧に手を洗う行為を習慣化させるにはどうすればいいのか--。医療ジャーナリストのマリーン・マッケーナによる考察。

TEXT BY MARYN MCKENNA

TRANSLATION BY CHIHIRO OKA

WIRED(US)

MIRAGEC/GETTY IMAGES
MIRAGEC/GETTY IMAGES

トランプ政権が多少の犠牲を払ってでも経済再開を優先すると決めたことで、新型コロナウイルスの対策本部は存在意義を失った。それに米疾病管理予防センター(CDC)は3カ月にわたり沈黙を守ってきたし、ワクチンの完成には最低でも1年はかかるとされる。一方で、全米各地では徐々にロックダウン(都市封鎖)が解除されつつある。

こうした状況では、個人の意識と行動が未来を大きく左右する。ソーシャル・ディスタンス(社会的な距離)の確保、マスクの着用、手洗いの励行といったことが、これまで以上に重要となるわけだ。なかでも手洗いは、最も簡単で基本的な感染予防策である。ただ、日常生活でいちばん手をよく洗っているであろう医療従事者たちでも、これを常に正しく行うことは非常に難しい。

ハンガリーの医師ゼンメルワイス・イグナーツが1846年に、産褥熱の予防に医師や看護師の手洗いが有効であることをウィーンの病院の産婦人科で働いたときに発見してから、すでに174年が経つ。そして抗生物質への耐性をもつ「スーパーバグ(超多剤耐性菌)」の増加が大きな問題になり、世界各地の医療機関で強毒性のクロストリディオイデス・ディフィシル菌の集団感染が確認されるようになってから、すでに20年近くにもなる。

こうしたなか、米国では毎年200万件の院内感染が起きる。つまり、医療従事者と患者のいずれもが病原体をうつし合っているのだ。

CDCや世界保健機関(WHO)だけでなく、感染対策の専門家たちは誰もが口を揃えて、医療現場での手洗いの重要性を訴える。それでも医療従事者に手を洗うことを徹底させることは、信じられないくらい困難なのだ。WHOからは医療現場に向けて手洗い徹底を求めるメッセージが繰り返し発信されているが、CDCの推定では医療従事者は手を洗うために本来必要な時間の半分しかかけていない。

しかも医療従事者たちは、手を衛生的に保つようにすれば、米国で毎年起きている院内感染の50~70パーセントは防げるという事実を理解しているのだ。アリゾナ州フェニックス在住の疫学者サスキア・ポペスクは、「手指衛生は悩みの種です」と言う。「常に手を清潔に保つことのできている人など、どこにもいません」

過去の失敗と成功

新型コロナウイルスとの共存を前提とした新たな生活習慣の確立が求められているいま、わたしたちは医療従事者ですら完璧には実践できていないことに取り組んでいく必要がある。手洗いを訴えるテレビCMや交通機関の広告スペースを使った公共キャンペーンのようなものはほとんど存在しないなか、誰に言われなくても自分で忘れないようにして、意識的に手を洗うようにしなければならないのだ。

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