PR

WIRED WIRED

屋根すれすれに巨大な飛行機が飛び交う!? ヒースロー空港の“隣”に住む人々の非日常な日常生活

 ロンドン西部にあるヒースロー空港のすぐ“隣”では、住民たちがごく当たり前の日常を過ごしている。ただし、45秒ごとに離着陸する航空機が頭上を通過することを除けばだ。そんな街の暮らしをフォトグラファーが捉えた。

TEXT BY LAURA MALLONEE

TRANSLATION BY SATOMI FUJIWARA/GALILEO

WIRED(US)

写真家のバーティー・テイラーがヒースロー空港のそばで撮影した風景。PHOTOGRAPH BY BERTIE TAYLOR
写真家のバーティー・テイラーがヒースロー空港のそばで撮影した風景。PHOTOGRAPH BY BERTIE TAYLOR

ロンドンのフェルサムにあるマートル通りに住んでいるなら、飛行機に乗り遅れそうになって冷や汗をかくこともない。1930年代風の家が建ち並ぶ約304mの通りの先にはヒースロー空港がある。家から空港を眺めることもできるのだ。

毎年、毎日、45秒ごとに離着陸する航空機が頭上を行き来することが気にならないなら、これは素晴らしい特典だろう。航空機は屋根の上からほんの数mに見えるところを飛びかい、巨大なアルミの鳥のように空を覆い隠す。とてつもない騒音も立てる。

「その下に立つと、ほとんど何も聞こえないんです」と、写真家のバーティー・テイラーは言う。テイラーは写真シリーズ「Under the Flight Path」(飛行経路の下に暮らす)のワンシーンとして、マートル通りを撮影したのだ。

耳をつんざくような騒音

フェルサムは20世紀初頭から交通の要所だった。英国で2番目に大きい鉄道の駅ができ、第二次世界大戦中はドイツ軍による空爆の標的となった。しかし、アルゼンチンへ向かう英国製旅客機「Avro 691 Lancastrian」が1946年1月1日に第1便としてヒースローを飛び立つまでは、絶えず騒音がする場所ではなかった。

1960年代には、2本のメイン滑走路が数百メートル延長され(そのうち1本はマートル通りの北西およそ400mのところに位置する)、「ボーイング747」のような大型機でさえ離着陸できるようになった。

容認されている騒音レベルは、日中が94デシベル(15m先で手持ちの削岩機を使っているときの音に相当)、夜間は87デシベル(ガソリンで動く芝刈り機の音)になっている。だが、より静かなエンジンと工夫された飛行経路のおかげで、騒音はここ数十年で抑えられている。

それでも2019年には、ヒースロー空港に対する騒音の苦情が、平均して7分に1回寄せられたという。不快な要素は騒音だけではない。近隣の住民たちは自動車と航空機の両方による大気汚染にも苦しめられている。

また言うまでもないが、ときには恐ろしい目にも遭っている。08年には「ボーイング777」がエンジン停止を起こし、危うくマートル通りに墜落するところだった。

日常に溶け込む巨大な飛行機

こう聞くと悪夢のような話ばかりだし、実際に地域住民は困っている。空港の近くでの暮らしがどんなものであるか興味をもったテイラーが18年9月にマートル通りを訪れたとき、住民たちは飛行機好きたちのクルマが家の前の道をふさいでしまうことにいら立っているようだった。

遠くはドイツやオランダからやってきた航空ファンたちが、空港のフェンスそばにある緑の公園で群れをなし、「エアバスA380」や「ボーイング777」の着陸に歓声を上げる。空港の近くで自分のバンの屋根に乗り、この壮大な光景をFacebookでライヴストリーミングしている中年男性さえいた。

テイラーは自身のクレイジーなプロジェクトのために、15回以上もマートル通りを訪れた。交通渋滞にはまったり、近所のガソリンスタンドの壁に乗ったり、馬の放牧地を囲む有刺鉄線によじ登ったりしながら、日常生活の間近で飛行機を撮影したのだ。

彼が撮影した写真の多くには、洗車したりサッカーをしたり、アイスクリームを注文したりする住民が気にもとめないなか、巨大な航空機が映り込んでいる。「何でもそうですが、日常のなかでは気にならなくなるんです」と、テイラーは話す。

だが、誰かの家の屋根の後ろから、賞賛すべき驚異的な技術が集積した物体が飛び出してくる様子を見ることは、ほとんどの人にとってはまだ驚きだ。テイラーは「バッキンガム宮殿やビッグベンに行くより感動的ですよ」と言う。

わたしたちとしては、マートル通りに暮らす人々の日常が平穏であることを願いながら、テイラーの写真を拝見させてもらうことにしよう。

あなたへのおすすめ

PR

PR

PR

PR

ブランドコンテンツ