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生きたクラゲを電気的に“ハック”して3倍速で泳がせる: 驚きの実験がロボット工学にもたらす可能性

 クラゲに電気装置を取り付けて、その遊泳速度を3倍に増大させたという研究成果が発表された。この一見シンプルに見える研究が、ロボット工学におけるエネルギーの問題への新たなアプローチとして注目されている。これにより、いつの日か海を漂う“脳をもつクラゲ”たちが、水質調査のためのセンサーネットワークとなる日がくるかもしれない。

TEXT BY MATT SIMON

TRANSLATION BY MIHO AMANO/GALILEO

WIRED(US)

STEVE CHRISTO/CORBIS/GETTY IMAGES
STEVE CHRISTO/CORBIS/GETTY IMAGES

この言い方に悪気はないのだが、ロボット工学者は動物界において何の成果も得られていない。鳥は難なく空を飛び回るのに、人工のドローンは空から真っ逆さまに落ちる。人間は2本足で優雅にバランスをとるが、ヒト型ロボットはぶざまに倒れてしまう。ロボット工学者たちが進化の驚異に近づくには、膨大な努力が必要なのだ。

しかし、勝てないなら“ハック”してしまう手もある。カリフォルニア工科大学とスタンフォード大学の研究者は、科学技術誌『Science Advances』で2020年1月29日に発表した論文で、クラゲにマイクロチップと電極を取り付けて、遊泳速度を大幅に速めた仕組みについて説明している。

秒速2cmだったクラゲの遊泳スピードを秒速6cmまで速めたこの仕組みは、バイオニッククラゲへの第一歩だ。科学者たちは、このクラゲを海の水質をサンプリングするための浮遊するセンサーネットワークとして利用するかもしれない。より広い意味で言えば、地球上に生命が誕生して以来、進化の過程で生まれなかった力を動物に与えるための動きだとも言える。

クラゲが「最適な被験者」である理由

ロボット工学において、エネルギーは依然として大きな課題だ。ロボットのセンサーを動作させ、その手足やプロペラを動かすには多くの電力が必要になる。そのために巨大なバッテリーを搭載することになり、結果として重量が増える。そして重量が増えれば、それ自体を動かすためにさらなる電力が必要になるという、堂々巡りに陥ってしまう。

一方、動物は生まれつきエネルギー効率に優れている。自然淘汰は、つがいになって遺伝子を次世代に伝える余剰エネルギーをもつ個体に有利に働いているのだ。

クラゲは遊泳効率が極めて優れているだけでなく、脳や疼痛受容体がない。この偶然の特徴によって、クラゲはこの研究にとって最適な被験者になっている。

「これは重要なことです。ほかの生命体では倫理的に問題があると思われるような方法で、クラゲの遊泳を操作できますから」と、機械工学者のジョン・ダビリは言う。彼はスタンフォード大学とカリフォルニア工科大学で学んだ経歴をもち、この論文の共著者でもある。

とはいえ、クラゲがストレスを受けていないかと心配になるが、その可能性はないようだ。というのも、クラゲはストレスを感じると粘液を分泌するが、今回の研究対象ではその反応が認められなかったからだ。「そのうえ可逆性もあります。装置を外せば、クラゲは正常の機能に戻るのです」と、ダビリは言う。

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