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この地球に「1兆本を植樹」すれば気候変動に対処できる? 正論に見えるアイデアに潜む根本的な問題点

 「1兆本の木で地球が救える」「新しい農業メソッドで炭素を1兆トン吸収できる」といった研究や提案が、科学者たちからの激しい批判に晒されている。こうした提案がもつ問題点は、その裏にある数字の怪しさだけではない。画期的と思える解決策の提唱によって、実は失われるものがある。

TEXT BY ADAM ROGERS

TRANSLATION BY MUTSUMI FUNAYAMA

WIRED(US)

ORJAN F. ELLINGVAG/GETTY IMAGES
ORJAN F. ELLINGVAG/GETTY IMAGES

「気候変動への最善の対策はシンプルだ。1兆本の木を植えればいい」--。こんな主張に「ノー」と言うのは、非道な人間くらいだろう。

『サイエンス』誌に2019年夏に発表された記事によると、大量に木を植える方法は「いまのところ最も効果的な温室効果ガスの排出削減方法」だという。おまけに、木が嫌いな人なんていない。

批判を浴びた「植樹案」

だが、その計算が少々怪しいことがわかってしまった。大勢の気候科学者と生態学者がこの研究を批判し、計算に多くの誤りがあると19年9月になって指摘したのだ。

別の環境学者のグループが同じころ、農業技術スタートアップのインディゴ・アグリカルチャー(Indigo Agriculture)に対して異議を唱え始めた。同社が土地ベースの炭素隔離戦略「Terraton Initiative(テラトン・イニシアチブ)」を宣伝していたからだ。テラトン・イニシアチブは、1テラトン(1兆トン)の二酸化炭素を吸収できるという新しい手法を採用した農家に対して、補助金を出すというものだった。

これらのゴールは重要で、高貴な理想ではある。気候変動を止めたくない者など、米国政府以外にはまずいないだろう。しかし、問題は「数字」なのである。

まずは植樹のほうから考えてみよう。『サイエンス』誌で植樹を提案した科学者たちは、現在地球上のどこに木が生えているのか、詳細なマッピングを実施した。樹木数の調査と衛星データによって、さらにどのくらい木を増やせるのか、そしてそれらの新しい木がどれだけ二酸化炭素を吸収できるのかを試算したのだ。

計算によると、新しく木を植えられる場所は9億ヘクタールぶんあり、これによって205ギガトンの二酸化炭素を吸収できるという。これは「気候変動に関する政府間パネル」の定めた「温暖化を1.5℃未満に抑える」という目標にも一致している。よし、これで世界は救われた!

森林の回復は必要だが…

しかし、問題はここからだ。研究チームは、これまでに排出された二酸化炭素の55パーセントが、陸地ではなく海によって吸収されてきたことを忘れている。ゆえに、二酸化炭素の合計量を実際の半分ほど少なく見積もっているのだ。

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