PR

WIRED WIRED

映画『パラサイト』が作品賞を受賞しても、アカデミー賞の変革は望めない

 2020年のアカデミー賞は、韓国映画『パラサイト 半地下の家族』が作品賞など4部門で受賞した。この勝利は1世紀に及ぶアカデミー賞の“怠慢”に終止符を打つものだが、政治色が濃かった今年の授賞式の様子とその結果からは、アカデミーに真に必要とされている変革は期待できないのではないか--。映画批評家のリチャード・ブロディによるアカデミー賞の総括。

KEVIN WINTER/GETTY IMAGES
KEVIN WINTER/GETTY IMAGES

アカデミー賞授賞式のクライマックスから話を始めよう。今年のオスカーでは、韓国映画『パラサイト 半地下の家族』が作品賞を受賞した。外国語の映画が最高の栄誉に輝くのは、1929年にアカデミー賞が始まってから初めてだ。

誰もがそろそろだろうと感じていた動きで、わたし個人としては、昨年にアルフォンソ・キュアロンの『ROMA/ローマ』が作品賞をとるだろうと考えていた。一方で、今年は『1917 命をかけた伝令』が勝つだろうと思っていたので驚いたが、ポン・ジュノ監督の『パラサイト』のほうがはるかに優れた映画なので、予想が外れてうれしい。

『パラサイト』の勝利は、実に1世紀に及ぶアカデミー賞の怠慢に終止符を打つものだ(例えば、1973年にはイングマール・ベルイマンの『叫びとささやき』が、こともあろうに『スティング』に破れている)。

多様性の欠如と差別

今年の授賞式は冒頭から政治色を帯びていた。ただ、政治的な発言をするプレゼンテーターや受賞者が目立つなかで、わたしが特に強い印象を受けたのはスピーチではなく歌だった。授賞式はジャネール・モネイの歌う教育番組「Mister Rogers’ Neighborhood」の主題歌で幕を開けた。

モネイは番組の司会者だったフレッド・ロジャースのように、ステージに用意されたセットでジャケットを脱いでカーディガンを羽織り、白人ばかりの観客席やテレビで授賞式を見ている人たちに向かって「お隣さんになってくれないかな(Won’t you be my neighbor?)」と歌いかける。

モネイの歌声は、これまで誰も問題にせず、また変革の気配も見られなかった差別という問題を浮き彫りにした。これはアカデミー賞やハリウッドのセレブリティーを越えて、社会全体に広がっている。

続いてステージに立ったスティーヴ・マーティンとクリス・ロックが指摘したように、今年の黒人俳優のノミネートは1人(『ハリエット』のシンシア・エリボ)だけ。女性監督にいたっては皆無だった。

ノミネート一覧における多様性の欠如は明白だが、同時にインクルージョンの尊重というわざとらしい努力もあざといほどだった。アントニオ・バンデラスが主演男優賞の候補に入ったことや、マーティン・スコセッシの『アイリッシュマン』が作品賞をはじめ10部門でノミネートされたこと、また『Hair Love』が短編アニメ映画賞を受賞したことなどが、具体例として挙げられるだろう。

続きを読む

あなたへのおすすめ

PR

PR

PR

PR

ブランドコンテンツ