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タンパク質をつくり出すリボソームの「再設計」は、すべての生命に革新をもたらすか

 すべての生命を構成するたんぱく質は、わずか20種のアミノ酸からできている。現在、ケンブリッジ大学の科学者たちは、細胞内の分子工場である「リボソーム」に手を加えて、扱えるアミノ酸の種数を大幅に増やすことで、製薬や材料工学に有用な、新たなたんぱく質を生み出す取り組みを始めている。

TEXT BY ROGER HIGHFIELD

TRANSLATION BY TOMOYUKI MATOBA/GALILEO

WIRED(UK)

SCIENCE PHOTO LIBRARY/CORBIS
SCIENCE PHOTO LIBRARY/CORBIS

生命をつづる語彙はとても限られている。もし生命を構成する要素のレパートリーを増やすことができれば、巨大で複雑なたんぱく質の製造方法に革命がもたらされ、次世代の薬剤や分子マシン、奇跡の新素材の発明につながるかもしれない。

地球上のすべての生命はたんぱく質によって構成されている。そのたんぱく質は、わずか20種類のアミノ酸という共通の化学ユニットでできている。だが、ケンブリッジのMRC分子生物学研究所に所属する研究者たちは、標準の20種に含まれない、新たなアミノ酸で構成されたポリマー(高分子からなる物質)の開発に一歩近づいた。

「リボソームの再設計」が実現すること

研究所に所属する400人以上の研究者のなかで最大のスペースを占めているのが、ジェイソン・チン率いるチームだ。このチームは現在、化学者がつくりだすレベルをはるかに超える複雑なポリマーを合成するためのツールを組み上げた。

チンのチームはこれを、リボソームを再設計するという方法で成し遂げた。リボソームとは、すべての生きた細胞内に存在する分子工場だ。40億年前の生命の夜明け以来、たんぱく質を合成することで、遺伝子に実体を授ける仕事を続けている。

工業的手法では、ビーズを糸に通すように、単純な化学ユニットを組み合わせてポリマーをつくる。一方、リボソームは生体内で、20種類の基本的なアミノ酸をシャッフルし、酵素や分子マシン、光センサーなどの精巧な立体構造をもつたんぱく質をつくりだしている。

リボソームに手を加え、はるかに多くの種類のアミノ酸をもとに分子を組み立てられるようにするチンの研究によって、自然界に存在するどんな分子をもしのぐ大きさと複雑さをもつ、数万のアミノ酸と数百万の原子から構成される高分子を生み出せる可能性が見えてきた。

リボソームの構成と働き

この実現のために、チンはリボソームの「ターボチャージ」における、ある重要な課題を解決した。リボソームは生命維持に必要不可欠であるため、わずかな改変でさえも死にいたる可能性がある。そのため、彼は過去15年にわたって本来のリボソームと同時にはたらく「直交性リボソーム(orthogonal ribosome)」をつくるためのツールの開発に没頭してきた。これは細胞に必須の機能は本来のリボソームに任せるという発想で、チンいわく「ざっくり言うと、ひとつのOS上に、もうひとつ別のOSを走らせるようなもの」だという。

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