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未来のプログラマーは、いま「SF作品」で倫理を学んでいる

 大手テック企業の倫理観が問われるスキャンダルが続くなか、米国ではコンピューターサイエンスを学ぶプログラムに倫理の授業を加える大学が増えている。教材は、SF作品だ。

TEXT BY GREGORY BARBER

TRANSLATION BY NORIKO ISHIGAKI

WIRED(US)

ILLUSTRATION BY JAMES YANG
ILLUSTRATION BY JAMES YANG

レベッカ・ローンホースの短編『本物のインディアン体験TMへようこそ』の主人公は、ちょっとさえない男だ。

彼はアリゾナ州セドナで、客に「本物のインディアン体験」をさせる仮想現実ツアーを主催する会社でガイドを務めている。映画から拝借した場面をデジタルで再現する「ビジョン・クエスト」なる体験へ人々をいざなう。彼自身、現実世界ではひとりのネイティブアメリカンだが、自分は旅行者が望むような理想的な「インディアン」ではないと思っている。だがそこへある若者がやってきて、やがて主人公の仕事を盗み、生活そのものを乗っ取ってゆく--。

胸が張り裂けるような、それでいて解釈の余地を残すストーリーは、ネビュラ賞やヒューゴー賞をはじめ、権威あるSF文学賞をいくつも獲得している。

しかし、イリノイ大学シカゴ校でエマニュエル・バートンの倫理学の授業をとっている学生にとって、この物語は心から共感しにくいようだ。「主人公に喝を入れたくなるようです」とバートンは言う。

そこから授業の話題はInstagramへと移り、インフルエンサーと真正性の危うい関係が議論される。さらに、サイバーワールドをつくるときにどんなデザインを選ぶか、サイバーワールドがそこで働く人間にどんな影響を与えるかにまで話は広がる。

授業が終わるころには、「テクノロジーと感情のかかわりを定義する」という掴みどころのない目標に少し近づいていれば--そうバートンは願っている。

プログラマーやエンジニアのための倫理学

この試みは非常に重要だとバートンは言う。なぜなら、クラスの受講生はほとんどがプログラマーだからだ。

同校のコンピューターサイエンス専攻では、バートンの倫理学は必修と決められている。シラバスにはSF作品の名がずらりと並ぶ。プログラミング漬けの24時間ハッカソンから少し離れ、ナラティブやキャラクターを通じて、いずれ構築し世に出すことになるプロダクトについて考えてもらうのが狙いだ。

「物語は人のペースを落とさせるいい方法です」とバートンは言う。さらには、倫理観のあるエンジニアの育成にもひと役買うかもしれない。

エンジニアにどう倫理を教えるか、またそもそもその価値があるのかについては、長年議論が錯綜してきた。1996年、ある研究者のグループが、コンピューターサイエンスの履修課程に倫理学を含めるべきとする提言を業界の有力誌『Communications of the ACM』に発表。次の号にはふたりのコンピューターサイエンティストがそれに反論する書簡を編集部に寄せ、掲載された。

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