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生物を危険から守る「闘争・逃走反応」は、骨から放出される物質が引き起こしていた:研究結果

 生物が恐怖や危険の生理学的反応として、生存のために戦うか逃げるかの準備を整える「闘争・逃走反応」。これまでアドレナリンの作用で引き起こされると考えられてきたが、実は骨から放出されるたんぱく質が原因で起きているという研究結果が、このほど発表された。どうやら脊椎動物の「骨」は、ストレスを生み出す器官でもあるということらしい。

TEXT BY SANAE AKIYAMA

VADIMRYSEV/GETTY IMAGES
VADIMRYSEV/GETTY IMAGES

ヒトを含む脊椎動物は、突然の恐怖や差し迫る危険に直面すると、身体に「急性ストレス反応」が起きる。瞳孔は拡大し、周囲の音は聞こえなくなる。鼓動は一気に速まり、血圧が上がって呼吸が激しくなるだろう。すべては筋肉にエネルギーを送って危機的状況に対応できるようにするためだ。

恐怖や危険の生理学的反応として、生存のために戦うか逃げるかの準備を整える「闘争・逃走反応」は、これまでアドレナリンの作用によって引き起こされると考えられてきた。ところが、このほど『Cell Metabolism』で発表された新たな研究によると、闘争・逃走反応を促すのは骨から放出される「オステオカルシン」と呼ばれるたんぱく質なのだという。

なぜ骨なのか? それは脊椎動物の骨が、何に特化して進化してきたのかを考える必要がある。

「骨」から放出されるオステオカルシンの秘密

「骨はただの石灰化した管の集合体にすぎないという考えは、われわれの生物医学的文化に深く根付いています」と、コロンビア大学教授で遺伝発達学を専門とするジェラルド・カーセンティは説明する。彼は10年ほど前の研究で、骨格から放出されるオステオカルシンが血流に乗って膵臓、脳、筋肉などの生物学的機能に影響することを明らかにしている。

オステオカルシンは非コラーゲン性たんぱく質の25パーセントを占めるもので、一見すると骨とは無関係だと思われる身体の部位に、さまざまな作用を引き起こす。例えば、細胞のグルコース摂取能力を高めて代謝を調節したり、持久力を高めてより速く走れるようにしたりする。また、生殖能力を高めたり、記憶力を改善したりする作用もあるという。

そこで研究チームは興味深い仮説を立てた。これらの生理学的変化のほとんどは、野生で捕食動物に狙われている状況下など、予測不可能で危険な環境での生存を助けるものである。ならば脊椎動物の「骨」は、突然の危険から身を守るために進化したのではないだろうか--。

「骨は生物を危険から守るために進化したものだと考えるなら、オステオカルシンのホルモン的機能は意味をもち始めます」と、カーセンティは言う。「頭蓋骨は脳を外傷から守り、骨格は脊椎動物が捕食者から逃れることを可能にします。耳のなかの骨でさえ危険が近づいていることを警告してくれます」

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