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「熱波」の襲来は、どこまで高精度に予測できるのか? 科学者たちの挑戦

 この7月に欧米をはじめ世界各地を襲った記録的な猛暑。その原因となる熱波の到来を予測する試みが進められている。早期に予報できれば、熱中症や電力需要の急増などに早めに手を打てるからだ。予測の鍵を握るのは、マッデン・ジュリアン振動(MJO)と呼ばれる気象現象。極端な猛暑の予測は、どこまで精度を高めていけるのか。

TEXT BY ERIC NIILER

TRANSLATION BY CHIHIRO OKA

WIRED(US)

全米の主要50都市における熱波の発生回数は1960年代からこれまでに3倍に増えている。これは米国だけでなく世界的な傾向だ。JEENAH MOON/BLOOMBERG/GETTY IMAGES
全米の主要50都市における熱波の発生回数は1960年代からこれまでに3倍に増えている。これは米国だけでなく世界的な傾向だ。JEENAH MOON/BLOOMBERG/GETTY IMAGES

欧州を7月末に襲った熱波は記憶に新しい。パリでは7月25日午後に過去最高となる42.6℃を観測した。うだるような暑さに悩まされたのはパリ市民だけではなく、例えば「ツール・ド・フランス」の選手たちはネッククーラーを巻いてレースに臨んだ。ロンドンでは交通当局が地下鉄に乗る際に水を携帯するよう呼びかけ、スペインの消防士たちは山火事の消化に追われた。

この厳しい暑さを引き起こしたのは、「ヒートドーム」と呼ばれる気象現象だった。サハラ砂漠からやって来た熱い空気が大気の流れによって大西洋と東ヨーロッパとの間にとどまり、西ヨーロッパ全体で上空にドーム状の空気の傘を形成して、熱を閉じ込めたのだ。

米国では7月に東海岸周辺で12日間にわたって猛暑が続いたが、こちらもヒートドーム現象が原因だった。このときには、首都ワシントンD.C.を流れるポトマック川の水温が34.3℃まで上昇している。

こうした熱波の到来を予測することは、気象学では重要な課題となる。早期に予報できれば、熱中症を起こしそうになったときに使える臨時の休憩所を用意したり、電力需要の急増に備えるといった対策が打てるからだ。また、高齢者などの体調を崩す可能性が高い人たちの多い場所に、必要な機器や物資を届ける時間的余裕も生まれる。

全米の主要50都市における熱波の発生回数は、1960年代からこれまでに3倍に増えている。7月の世界の平均気温は、観測が始まった1880年以降で最も高かった。

鍵を握る「マッデン・ジュリアン振動」

こうした状況のなか、気象予報は向こう10日間の天気については非常に優れた成績を残している。そして気象学者たちは、マッデン・ジュリアン振動(MJO)と呼ばれる現象を観察することで、さらに長期の予報が可能になるよう努力を進めている。

マッデン・ジュリアン振動とは、インド洋で発生した積乱雲が東に進む現象だ。30~60日周期で繰り返し起きることから、「振動」と呼ばれている。この振動は波のように移動しながら、地上付近の気象に影響を及ぼす。高度18,000フィート(約5,500m)の場所で起きているエルニーニョ現象のようなものだと考えればいいだろう。

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