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脳に電磁刺激を与えれば、高齢者の記憶力が“若者並み”に改善される:研究結果

 高齢者の脳に電磁刺激を与えることで、記憶力が若者と同じぐらいに改善する--。そんな実験結果を米国の研究チームが発表した。サンプル数が少数といった課題はあるものの、研究チームは臨床分野での応用に意欲を示し、効果の安定性や持続性について研究を続ける方針だ。

TEXT BY LEO BEAR-MCGUINNESS

TRANSLATION BY TOMOYUKI MATOBA/GALILEO

WIRED(UK)

PAVLO STAVNICHUK/GETTY IMAGES
PAVLO STAVNICHUK/GETTY IMAGES

物忘れは老化の典型的な特徴のひとつだ。65歳以上の約40パーセントが、加齢に伴う記憶力低下にまつわる問題を何かしら抱えている。いったん物忘れが始まると、たいていは年齢を重ねるごとに悪化する。しかし、脳に刺激を与える新たな治療法によって、だんだん衰えていく記憶力を回復させることができるかもしれないという。

「年のせいで記憶力が悪くなったと誰もが言うでしょう」と、ノースウェスタン大学の准教授ジョエル・ボスは語る。ボスは脳への磁気刺激によって記憶力が向上したことを報告する新たな論文の筆頭著者だ。「鍵の置き場所やクルマの駐車スペースを忘れたり、人の名前と顔とが一致しなかったりといったことは、年をとるほどひどくなっていきます」

記憶力の低下を示すこうした事例は、海馬が自然に衰えていくことが原因であることが多い。脳の一領域である海馬は、短期記憶、長期記憶、空間記憶と密接に結びついている。

「年齢とともに海馬はある程度は縮小していくのです」と、ボスは言う。「衰えている状態はMRIのスキャン画像から確認できます。海馬が記憶を形成する際に必要な脳の領域との連携をうまくこなせていないのです」

海馬のサイズを若者と同じ程度まで回復させる方法はない。しかし、適切な刺激を与えれば海馬は多少なりとも若々しくなり、活力をとり戻すと、ボスをはじめとする研究者たちは考えている。学術誌『Neurology』に掲載されたノースウェスタン大学の新たな論文では、磁気パルスを使って海馬を再び活性化させて高齢者の記憶力を改善する方法を、ボスの研究チームが示している。

「メカニズムを完全に解明できたわけではありません」と、ボスは断りを入れる。「けれども、刺激を与えたあとの活動レベルを計測したところ、皮質ネットワークと海馬との間でコミュニケーションが活発になったことが示されたのです」

頭頂葉に磁気刺激を与える

実験の被験者は64歳から80歳までの16人で、健常な範囲内で加齢による記憶力の低下を示す症状が見られる。いくつかの記憶テストを実施した結果、成績はおしなべて悪く、回答の60パーセント以上が不正解だった。

「鍵の置き場所や名前を忘れる行為には、ふたつの段階があります。こうした段階を研究室で観察するために、ひとつのテストを開発しました」と、ボスは説明する。

「パソコンの画面上でさまざまなものを見せ、どこに何があるかを記憶してもらいました。例えば、鍵は左上、帽子は右下といった具合です。しばらくしてから『ここに鉛筆があります。前にも見ましたか?』と質問します。回答がイエスなら『では、これとペアになっていたのは何ですか?』と続けて尋ねました」

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