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その魚は、かくして「性転換」する--メスがオスに変わるメカニズムが解明される

 ブルーヘッドというベラ科の魚は、成熟後にメスからオスへと性転換することで知られている。種の継続のために進化してきた独特の生殖戦略のメカニズムが、このほど初めて解明された。DNAの配列変化を伴わず、特定の遺伝子のオンとオフを制御するエピジェネティクスと呼ばれる遺伝子制御機構は、いかに作用するのか。

FREDERICK R MCCONNAUGHEY/GETTY IMAGES
FREDERICK R MCCONNAUGHEY/GETTY IMAGES

TEXT BY SANAE AKIYAMA

動物の肉体的な性別は出生時には決定されており、変わらないものだと思ってはいないだろうか? 実は魚のうち約500種は、環境的なきっかけによって自然に性転換する。それは種の継続のために、長い間かけて進化してきた生殖戦略なのだ。

今回の研究で焦点が当てられたのは、ブルーヘッド(Bluehead Wrasse)と呼ばれるベラ科の魚で、この種は成熟後にメスからオスへの性転換が可能である。体色は黄色から青い頭部をもつものになり、生殖腺は卵巣から精巣へと変わる。これまで謎に満ちていたその秘密が、オープンアクセスの科学学術誌「Science Advances」で明かされている。

数時間で性転換の兆候をみせるメス

「わたしはブルーヘッドと呼ばれる魚を何年も追跡してきました。この魚は視覚的な刺激をもとに、非常に素早く性転換するのです」と、オーストラリアにあるラ・トローブ大学の遺伝学者、ジェニー・グレイヴス教授は語る。「性別がこれほど見事に転換する仕組みは、何十年も前から謎でした。遺伝子自体は変化しないので、視覚的合図によって遺伝子スイッチが切り替わっているに違いありません」

遺伝子スイッチの切り替えとは、つまりDNAの配列変化を伴わずして、特定の遺伝子のオンとオフを制御する、エピジェネティクスと呼ばれる遺伝子制御機構のことだ。

ブルーヘッドはカリブ海のサンゴ礁で、青い頭をもつ1匹のオスが、黄色いメスのハーレムを築いて暮らす魚である。ところが、このオスが群れからいなくなると、いちばん体の大きなメスが10日ほどで性転換する。それは人間のわれわれからすると考えられない“早技”だ。

オスが消えて数時間のうちに、いちばん大きなメスはストレス誘発反応を制御するコルチゾールの影響で気性が激しくなり、さらにオスのような求愛行動を見せるようになる。そしてオスへの移行期にあるメスは、1~2日で群れでの優位性を確立する。このころには女性ホルモンの血清エストロゲン濃度が低下して、卵巣閉鎖が観察できるという。

さらに3~4日経つと卵巣閉鎖が進行し、4~5日目には精巣組織が観察できる。6~7日経つと男性ホルモンの一種であるケトテストステロンが上昇して精子形成が始まり、8~10日以内には成熟した精子を生産して繁殖できるようになる。そして20日以内には、オスに典型的なあざやかな青い頭に着色する。

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