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なぜ、はしかは危険なのか? その圧倒的な感染力と、人体への脅威となるメカニズム

「この免疫細胞の本来の役目はウイルスを破壊することです。しかし感染すると、麻疹ウイルスを最寄りのリンパ節まで運ぶシャトルとして機能してしまうのです」

リンパ節は免疫システムの交通ハブだ。ここに到着した麻疹ウイルスは、真の標的に乗り移る。過去に感染した病原体を記憶し、抗体をつくる細胞だ。

これらは免疫システムの「記憶の宮殿」であり、将来の感染に対する抵抗力の源になる。麻疹ウイルスはこの細胞機構を乗っ取り、猛烈なスピードで複製し、拡散する。

カッタネオの推定によると、ウイルスを吸い込んでから1週間で、こうした細胞の50パーセント以上がウイルスに感染する。「これは異常事態です」と、彼は言う。「こうなると、免疫システムの半分以上がダウンした状態で歩き回っていることになります」

過去の感染の記録を“リセット”する

この段階の麻疹患者においては、身体の防衛機構が大きく損なわれているため、そのほかの細菌・ウイルス感染に対しても脆弱になる。だからこそ、免疫システムが弱った状態の人にとって、麻疹はより危険なのだ。化学療法を受けているがん患者や臓器移植を受けたばかりの人々、高齢者、乳児などが当てはまる。彼らの免疫システムは対抗が難しい。

ここから、麻疹感染の謎めいた長期的後遺症についても説明がつく。麻疹の感染を経験した子どもは、咳が止まって発疹が消えたあと、何年も経ってからも細菌性・ウイルス性の感染症にかかりやすい。簡単にいうと、麻疹ウイルスがそれ以前の感染の記録を抹消するので、身体が異物と認識できるものが麻疹だけになってしまうのだ。

病原体に対する「健忘症」は深刻だが、それが麻疹の感染力を強力にしているわけではない。強力にしているのは、その次に起きることだ。

麻疹ウイルスに感染した免疫系の記憶細胞は、リンパ節から循環器系に戻る。その際に気管上部の内壁組織にも残留する。この内壁組織には、麻疹に感染した記憶細胞と結合する特殊な受容体がある。

こうしてウイルスは水平的に感染していき、気管全体に蔓延する。細胞間の緊密な結合を利用するかたちで、隣接する組織に広がるため、感染の速さはほかの呼吸器病原体の約10倍に達する。

咳によって、待機中に霧のように拡散

麻疹ウイルスに感染したこれらの細胞の一部は、気道の内部にはがれ落ち、咳を誘発する。「要するに麻疹は、気管をトランポリンとして使うのです」と、カッタネオは言う。「ウイルスは咳によって飛び出します」

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