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ダイソンが本社をシンガポールに移転する理由は、英国のEU離脱だけではない

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 ダイソンの創業者であるジェームズ・ダイソンは、EU離脱推進派として知られる。だが、本社移転はそれほど単純な話ではない。背景には英国における人材不足や税制の違い、シンガポールが提供する優遇措置などがあると考えられている。

TEXT BY KATIA MOSKVITCH

TRANSLATION BY CHIHIRO OKA

WIRED(UK)

PHOTO: CHRISTOPHE ARCHAMBAULT/AFP/AFLO
PHOTO: CHRISTOPHE ARCHAMBAULT/AFP/AFLO

ダイソンはエンジニアリングと技術革新において、英国で最高のサクセスストーリーのひとつである。そのサイクロン掃除機で知られる企業が、このほど本社をシンガポールに移転する方針を明らかにした。創業者のジェームズ・ダイソンは欧州連合(EU)からの離脱推進派として知られるが、決断の理由は何だったのだろうか。

ダイソンの最高経営責任者(CEO)であるジム・ローウェンは、本社移転はEU離脱(ブレグジット)や、英国とシンガポールの税制の違いとは無関係だと話している。そうではなく、「未来に向けて最も大きな成長機会がある場所」にいるべきだと考えたからだというのだ。

ローウェンは以下のように述べている。「売上高という意味では、アジアでの機会が急速に拡大しています。アジア事業はこれまでも好調で、今後はこの地域での成長や投資に注力していきます」

創業者はEUから脱退することで、英国経済は大いに活性化すると主張してきた。これに対して企業としてのダイソンは、地元ではなくアジアに勝機を見出しているわけだ。キングス・カレッジ・ロンドンの経済学教授ジョナサン・ポルテスは、これこそ「わたしたちがジェームズ・ダイソンの言葉を鵜呑みにすべきではなかったことの証拠」だと言い切る。

シンガポール産EVの問題ではない

シンガポールとEUは2018年12月、自由貿易協定(FTA)と投資保護協定を締結した。8年にわたる交渉が結実し、関係強化に向けたフレームワークづくりでも合意したわけだ。

ダイソンにとって重要なのは、シンガポール企業であれば今後のEUとの取引が容易になるという点にある。つまり、離脱が実行に移される3月29日以降も、EU域内で関税なしで製品を販売できる。

ただ、ミシガン大学教授で東南アジアでの企業経営を専門とするリンダ・リムは、FTAだけが本社移転の理由ではないだろうと指摘する。ダイソンは2年前に電気自動車(EV)事業に参入することを決め、昨年10月にシンガポールにEVの生産拠点を開設すると明らかにした。しかし、FTAの利益を享受してEUでクルマを売るつもりなら、シンガポールで生産を行うことはむしろ不利になる。

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