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蚊の遺伝子操作によるマラリア撲滅が現実的に? 技術の飛躍的な進歩と、いま求められる議論

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 マラリアやジカ熱といった蚊が媒介する感染症に「遺伝子ドライヴ」で対抗しようとする研究が、いま世界各地で進められている。この技術によってケージ内の蚊の個体群を全滅させたとする論文も発表されるなど技術の飛躍的な進歩が見られるなか、その長期的な影響や規制に関する早急な議論が求められている。

TEXT BY LILY MEGAN MOLTENI

TRANSLATION BY MAI INOUE

WIRED(US)

インペリアル・カレッジ・ロンドンが2003年から独特なプロジェクトを始めている。サハラ以南のアフリカで年間約50万人もの人々を死に至らしめ、さらに殺虫剤への耐性も強めるマラリア媒介蚊に対処しようというプロジェクトだ。

生物学者のオースティン・バートとアンドレア・クリサンティが提案したその方法は、まさに遺伝の法則をハックするものだった。彼らは、蚊のDNAに「死に至る遺伝子」を埋め込み、それを自然よりも速いスピードで子孫に伝達されるように改変することによって、その個体群を全滅させられることに気がついたのだ。

「トロイの木馬」ならぬ「トロイの蚊」である。

蚊の個体群がわずか7世代で全滅

特定の遺伝子変異を個体群全体に急速に広める「遺伝子ドライヴ」は、コンセプトとしては数十年前から存在している。ただし、これまで世界規模の公衆衛生問題に応用した例はもちろん、実験室内での実証が行われた例もなかった。

しかしインペリアル・カレッジ・ロンドンの研究チームは、15年の歳月と1億ドル(約110億円)もの資金を費やし、ついに成功への第一歩を踏み出した。

バートとクリサンティのチームはゲノム編集技術「CRISPR」を用いて、ケージ内の蚊(マラリアを媒介する「ガンビアハマダラカ(Anopheles gambiae)」の個体群)を、わずか7世代で全滅させることに成功したのだ。

この研究結果は18年9月24日に『ネイチャー・バイオテクノロジー』で発表され、遺伝子ドライヴによって生物種を絶滅させた世界初の事例となった。

その種の運命を丸ごと操作する技術

「素晴らしい技術の進歩です」。そう評したのは、カリフォルニア大学サンディエゴ校の昆虫学者であり、自身も独自に遺伝子ドライヴの研究を行っているオマール・アクバリだ。

アクバリの研究室では、遺伝子ドライヴによって蚊にマラリア耐性をもたせることを研究目標としている。生物を根絶させるアプローチは長いこと不可能だと思われていたからだ。

「生物には淘汰圧[編註:特定の形質をもつ生物個体にはたらく自然選択の作用のこと。選択圧]という強力な抵抗力が働きますから」

インペリアル・カレッジ・ロンドンのチームは、重要な遺伝子に変異の余地に伝達する方法を開発し、この抵抗力の問題を克服したのだ。「今回の成果は、ある生物種の運命を丸ごと操ることは原理上可能であるということを、世界で初めて示した事例となりました」とクリサンティは語る。

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