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AIは「わかる」が何かは「わからない」--松原仁、人工知能の本質をかく語る

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 自己決定感が幸せの根源という概念を変える

では、AIが手取り足取り助言し、意思決定に関与するとなると、人間の自由意志、そして尊厳の問題はどうなるのか。わたしたちは、人は自由な意思をもつことが、尊厳につながると信じている。その前提が揺らぎつつあるのだ。

「人間は自由意志に基づいて行動するという自己充実感が幸福感につながっています。何を食べるとか、どこに行って何をするとか、誰と恋愛するのかなどは自分が決めているという意識があるわけです。しかし、好むと好まざると、それが現在は減っています。いまは何を食べるかは『食べログ』のレコメンドに従ったり、どの電車に乗るかもGoogleマップに訊ねたりします。つまり自由意志ではない意思決定が増えているのです。そうなると、これまでの幸福感をわたしたちは変えないといけない。生活がAIに侵食され、AIに生きがいを奪われて、幸福感が下がっていく可能性があります」。

なかでも労働の領域はAIによる侵食が進むと考える松原は、価値観の変更が重要だと言う。

「大人になったら働いて家族を養うという旧来的な仕組みは、実は充実感が大きいわけです。しかし、ロボットやAIが労働をかなりやるようになったら、ベーシック・インカムが導入されて、労働の充実感が減少し、生活にぽかっと穴が空いてしまう。週40時間労働だったのが、週20時間でいいとなった時に、残りの20時間をどう有意義に過ごすのか。このままいくと、多くの人が定年になったオヤジみたいになってしまいます」

歴史を振り返ると、日本で官公庁において日曜日が休みになったのは1876年で、たかだか142年前。官公庁が週休二日制となり土曜日が休みになったのが、1992年でわずか26年前でしかない。人々はより休日を取る体制に慣れてきたわけだが、これから一気に週休3日制や4日制になった際には、社会構造の大変化が予想される。そんな社会でどう生きるのかをわたしたちは考えないといけない。

「暇になる将来を嘆くのではなく、自己決定感が幸せの根源だという概念自体を変えないといけないと思います。AIに仕事や生活のかなりの部分を手伝ってもらいつつ、人間が新たな充実感を味わえるように適合していかないといけないですね」

 AIは倫理観をもてるか

現在、AIの研究においては「倫理」も重要なテーマのひとつだ。松原も参加する日本人工知能学会は、倫理委員会を設立して、人間中心の倫理感から、機械と共生する倫理感への移行の重要性について話し合っている。

「例えば、“なぜ人を殺してはいけないのか?”というテーマは、死ぬことができないAIには理解できるのかが問題になってきます」

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