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AIは「わかる」が何かは「わからない」--松原仁、人工知能の本質をかく語る

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このプロジェクトを主宰する松原仁に、AIの研究会で飛び回るなか立ち寄った羽田空港のカフェで時間を作っていただき話を伺った。1980年代からAIの研究に携わる彼は、86年に東京大学大学院情報工学博士課程を修了したときの論文タイトルが「知能ロボットにおける知識の表現と利用に関する研究」なのだから筋金入りだ。そんな彼にわたしは極めて率直な疑問から話を伺うことにした。

「松原さん、まず“わかる”ってなんですか?」と。

「実はそれがまだわからないんです。“わかる”ということが“わからない”んですね」と松原はにこやかに答える。彼をこの連載の最初のインタビュイーに選べたのは幸運だった。なぜならこの後も続く他の取材で何度も感じたように、AIについて考えるということは、人間という未だ謎に満ちた存在について考えることに他ならないからだ。

 「わかる」が何かは「わからない」

松原は「AIに“わからせる”ことが実はすごく難しい。なぜなら人間も“わかる”と言いながらも、いろんなことを“わかってない”からです」と言う。彼は研究過程で心理学者や教育学者と話をする機会が多く、特に教育分野では「わからせる」というのが大事な案件となっているという。生徒も「わかる」とよく言うが、「わかっている状態」と「わかっていない状態」の差がどこにあるのかを突き詰めると、実はそんなにないのではというのが松原の考えだ。

「ある課題に対して答えが出せることを“わかる”と言いますよね。でも人間は問題が解けるかどうかは関係なく、“俺はこれがわかっている”とか“君のことがわかっている”と平気で言うので、ある種の直感があるわけです。しかし、その“わかる”が一体なんなのかを突き詰めてみると、『錯覚』というと言い過ぎかもしれませんが、厳密にその状態を定義できないんです。“人間がわかるように、AIにもわからせなければいけない”とよく言われるのですが、では何ができたら人間と同じようにAIが“わかる”と言えるのか、疑問なんです」

現状、ディープラーニングという言葉に代表されるように、AIに大量の情報を学習させ、予想されるさまざまなインプットに対して、ある程度決まったパターンでの回答を生み出すのは、最も進んでいる領域ではある。しかしそれは人間が“わかって”答えを出すこととは違うのではと彼は考える。もちろん、人間にもパターン的な反応、回答は多々ある。そして日常的には一般的なコミュニケーションとして、わたしたちは“わかる”という言葉を多用して、齟齬なく生きている。しかし、抽象的な概念になるとどうか。

「例えば、人は“愛とは何か、わかってる?”と平気で言うんですけど、人間もそれはよくわかってないですよね。ましてやAIは性欲を原理的にもってないので、いくら人間には性欲があるとAIに教えたって、人間と同じようなレヴェルで愛とは何かはわからないと思います」

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