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火星への移住は無理だった? そこに「大気」はつくれない、という研究結果

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気圧は300ミリバールあれば十分?

しかし、ジャコスキーが間違っている可能性もあるのではないか。火星への植民を提唱するマッケイは、「火星の環境を変化させるうえで鍵となるのは、二酸化炭素、窒素、水の総量です。火星にこうした物質はどれだけあるのかについては、まだ正確にはわかっていません」と指摘する。

MAVENの調査で火星にあった二酸化炭素の一部が失われたことは明らかになったが、すべてが宇宙空間に消えてしまったわけではない。つまり、マッケイは「まだ希望はある」と言うのだ。「地中にある二酸化炭素の総量はまったく不明だと言っていいでしょう。十分なデータはなく、それを知るためには実際に地下深くまで掘って地質調査を行う必要があります」

火星で驚くべき事実が次々と明らかになっているのは確かだ。7月末には液体の水の存在が確認されたという発表があった。だからこそ、ジャコスキーの論文が火星植民構想の提唱者たちを意気消沈させることはない。

関連記事火星に「液体の水」の証拠があったなら、生命も存在しうるのか?

航空宇宙技術者で火星の探査および植民の促進を目的とした非営利団体(NPO)「火星協会」を設立したロバート・ズブリンは、ジャコスキーの論文にある数値は「体系立てて悲観的な見方」をしていると話す。彼の理論では1バールは必要ない。300ミリバールで十分だという(エヴェレストの頂上の気圧がこの程度だ)。「気圧が200ミリバールあれば宇宙服を着る必要はありません。そして、内部の気圧が外気と同じドームを建設することができます」

ズブリンとマッケイはまた、既存の仮説を発展させれば、未来の展望は大きく変わってくると主張する。例えば、人工の温室効果ガスはどうだろう。火星にもある塩素からフロンガスを生成して散布すればいい。

もちろん、実際にどうやるのかという問題はある。また、このいわば「スーパー温室効果ガス」によって火星にわずかに残されたオゾンを破壊することは避けなければならない。さもなければ、火星には放射線に加えて、人体に有害な強烈な紫外線が降り注ぐようになるだろう。

そもそも、なぜ火星に向かうのか?

参考までに書かせてほしいが、火星の植民化の提唱者なら、当然ながら地球温暖化を否定はしないだろう。どちらも同じ理論の元に成立しているからだ。火星へのテラフォーミングが不可能だとしても、足元の地球では確実に気候変動が進行している。それを引き起こしているのはわたしたち人類だ。

さらに蛇足だが、水の発見により、火星に生物が存在する可能性がわずかだが高まった。赤い惑星に生命が存在するとすれば、テラフォーミングのもつ意味が変わってくる。人類の植民によって既存の生物に影響が及ぶことは必至で、科学的なことに加えて倫理的な議論もなされる必要があるだろう。

そこで最後の質問だ。なぜ、火星への移住を目指すのか?

ジャコスキーはこう話す。「科学からは離れて、テラフォーミングについて根本的に問い直してみましょう。地球に住めなくなった場合に備えてバックアップとして居住可能な場所を用意しておくというのは、ばかげた議論だと思います。外的な要因も考えられますが、地球環境を破壊しているのは人類です。はるか遠くの火星を変えるより、地球というわたしたちが住むうえで素晴らしい環境を備えた惑星を守ることのほうが、よほど簡単です」

火星探査は必要だし、そのための火星基地の建設にも賛成だ。ただ、都市のような居住空間となると疑問が生じる。海や運河など本当につくれるのだろうか。深呼吸して、落ち着いて考えてみてほしい。わたしたちが知る限り、こうしたものが存在しうるのは広大な宇宙で地球だけなのだ。

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